読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

iPadへの過剰な期待

iPhone


 @katudonがiPadを持って我が家にやってきた。

 前日、彼から突然Mentionが入った。

 「RyoさんにぜひiPadを見て欲しい。感想を聞きたいから。」

 私は時間がないと断ったのだが、彼がどうしてもと迫るので、多忙な合間を縫って家に招いた。


 家に入るなり彼は自ら買ってきたカルビーの堅ポテトをボリボリ食べ始めた。3枚ほどを口に放り込んだ後、コーラを飲みゲップをする。

 「どうですかiPadは?ゲプッ アプリなんでも起動していいっすよ。ゲプッ」

 「どうもこうも、まずはパスワード入れてくれよ。」

 「あーすみません。ゲプッ」

 「Safari速いね。」

 「でしょ。ゲプッ。タブをたくさん開いてもモサモサしないんすよ。ゲプッ」

 「でもGizmodoが記事にしてた自閉症の動画、観れないね。」

 「あー そうっすね。ゲプッ」


 ネット上のコンテンツを全て観れないのは大きなストレスだ。ジョブズはFlashを搭載しない理由を手紙に書いている。おそらくApple主導でFlashからHTML5への移行が加速すると思われるが、私は現時点で観れない動画がある事に憤りを感じる。一般ユーザーにとっては未来ではなく今が大切なのだ。



 「ゲームとか電子書籍はやっぱりいいね。画面も綺麗だし臨場感がある。」

 「そうっすね。iPad版のFlight Controlがあるんですけどやります?2人でやれるんすよ。ゲプッ」

 「いいよ。」

 2人でFlight Controlをやり始める。まったりとしたBGMが流れる。あの音楽では盛り上るはずもなく、しばらくして止めた。

 「どうですか?ゲプッ」

 「Flight Controlはいいよ。iPad版だから画面も綺麗だし。でもiPhone版のアプリはキツいね。拡大すると画像が粗くなる。」

 「そうっすね。ガプッ」


 iPhone版のアプリは拡大すると明らかに文字や絵が粗くなる。等倍で使えばいいのかもしれないが、それならiPhoneでいい。ポケットベガスなどのゲームは2倍にしても画像の粗さが気にならなかったが、BB2Cなどの文字を主体とするアプリは実用に耐えない。


 「しかしこのキーボードはどうにかならんのか。使いものにならんぞ。なんでフリック入力がないんだ。」

 「そんな事ボクに言われても知りませんよ。グフッ」


 iPadのキーボードはAppleの手抜きだ。外付けキーボードは邪道だ。iPad本体だけで入力できなければiPadの意味がない。慣れれば使えるという声もあるが、どう考えてもスムーズな入力ができるとは思えない。原因はホームポジションを固定できない所にある。

 通常のキーボードであれば、「F」と「J」に人差し指を置き、他の指を横に並べる。そこを支点として上下に動かす事でブラインドタッチが可能になる。それがiPadはできない。「F」の下に申し訳なさそうにアンダーバーが表示されているが意味はない。iPadのキーボードは、まるでお化けのように両手を宙に浮かせたまま入力する必要がある。長文には向かない。これなら10キーを配置して人差し指だけでフリック入力したほうが速いのではないか。

 以前私は「ジョブズへの手紙」という記事を書き、フリック入力の必要性を訴えた。ジョブズ本人に訴えたのではなく、Hatenaの中心でひっそりと叫んだだけだが、今思うとあれは正しかった。ベゼルが広いため親指でフリックする事はできないが、少し工夫すれば実装できるはずだ。そして「触覚キーボード」の噂はどこへいったのか。


 「もういいっすよ。RyoさんiPad要らないんでしょ。ベフッ」

 「いやそういう訳では。用途によって、、、」

 「帰ります。バフッ」

 残りわずかになったコーラを蹴倒し彼は帰って行った。

あとがき

 この物語はフィクションだ。@katudonが地元に帰ってきている事をタイムラインで知り、私が声をかけた。家に誘ったのも私だ。私は彼より年上だが、ネット上では大先輩で尊敬している。彼はカルビーの堅ポテトを食べていたが、ゲップはしていなかった。

 会話の合間に入る地の文章は私の本心だ。

 現在、各方面でiPadが絶賛されているが、ファーストインプレッションは求める用途によって大きく異なる。私はiPadにPCの代わりとなる事を期待していた。電子書籍やWEBなど、作品や情報を閲覧するインプットだけではなく、キー入力によって文章を書くというアウトプットに重きを置いていた。PCやiPhoneと同じレベルの入力スピードを求めていた。本当にメインデバイスとして使いたかった。

 だが、文章ではなくイラストを描く事が目的だったり、音楽を作る事が目的なら、おそらくiPadを絶賛するだろう。ビューアーとしての使い道しか考えていなければ問題ないだろう。求める用途によってインプレッションが異なるというのはこの事だ。

 私はiPadを買わないのか? 否。買うだろう。何故か? iPadには可能性があるからだ。思えば当初はiPhoneも日本語入力がモッサリして使いものにならなかった。バージョンが上がるごとに改善された。他の多くの機能も追加された。Apple製品にはそれが期待できる。iPadも自分の用途に最適化される事を願って買うだろう。例えばフリック入力を実現したアプリが登場したり、革新的なキー配列が実装される事を願って。


<この記事をはてブ&Retweet!>
<この記事をRetweet!>