iPhoneへの想い

失ってはじめて気づく本質がある。

2ヶ月前。

OSを4.2.1にしてからiPhoneの動作が不安定になった。アプリがクラッシュしたり、SMSの文字入力がもたついたりした。

スリープさせた後、反応しなくなる事もあった。そんな時は、スリープボタンを押したままホームボタンを押して再起動させた。

嫌な予感はしていた。

1月28日

いつもの朝。コンビニでコーヒーを買って仕事先のビルへ向かう途中。ポケットからiPhoneを出してTwitterをしようとしたが、どのボタンを押しても反応しない。

再起動も効果がなかった。パスコードを入力するロック画面と、黒背景に白リンゴの画面が交互に表示されるだけで、操作できなくなった。

どうにもならなくなった。

そのまま仕事を始めたが、手につかない。まめにバックアップをしていなかったから、復元すると2ヶ月前のデータになってしまう。大切な写真やSMSが消えてしまう。

誰とも連絡が取れず、生きた心地がしなかった。身近な人も携帯番号とメールアドレスは覚えていない。Twitterもできない。いつの間にか人とのコミュニケーションにおいて、iPhoneが大きなウェイトを占めていた。

一刻も早く家に帰って復元したかったのだが、そんな日に限って仕事が忙しい。ようやく一段落した夜。iPhoneをふと見るとロック画面で止まっていた。パスワードを入力する事ができた。復活した。

この日は心身ともに疲れ、家に帰ったがバックアップはできず、そのまま寝た。

1月29日(土)

夕方、再発した。

家にいたので、iPhoneをMacBook Airに接続した。iPhoneの操作はできない状態だが、Mac側では認識したので、まずはバックアップをした。

トラブル時の復元は初めてだ。復元を少し誤解していた。その時点のOSやファームウェアもバックアップされると思っていた。それなら破損したOSのファイルも保存されて、復元→障害のループに陥るのではないかと思っていたのだ。

だが、バックアップされるのはデータだけで、OSなどは含まれないようだ。復元はiPhoneを工場出荷時の状態にした後、SMSなどのバックアップしたデータを戻すという、二段階の工程になっている。詳しくはこちらの記事を参照して欲しい。

さて、私のiPhone。MacのiTunesで「復元」ボタンを押して工場出荷時に戻そうとしたが、「ファームが書き込めません」とエラーが表示された。画面の指示通り、iPhoneのケーブルを再接続したら解決した。iPhoneが工場出荷時に戻った。

次に、バックアップからの復元を試みだが、残り22時間と表示して先に進まない。ひとまずMacBook Airを再起動しようとしたが、今度はMacがリンゴマークを表示したまま立ち上がらなくなった。

青ざめた。

iPhoneが工場出荷時の状態で、母艦も逝った。Macのバックアップはしていなかった。消えて困るデータはMacにさほど入っていない。ただ、iPhoneには沢山ある。両方同時にダメになる事は想像していなかった。

八方ふさがりで、途方に暮れていたら、どこからともなく一匹のアビニシアンが現れた。

見事にMacBook Airが起動した。もう一度iPhoneを工場出荷時の状態に戻してバックアップから復元。約1時間で終了した。

iPhoneが生き返った。

しかし、復元が終了してパスコードロックの設定画面になり、数字を入力しようとしたら、あのアップルマークが一瞬表示された。すぐにコード設定画面に戻ったが、気持ち悪いのでパスコード設定はやめた。

ふと思い出した。OSのアップデートは2ヶ月前。ロック画面にパスワードを設定したのも2ヶ月前。もしかしたらロック画面を制御するファイルが破損しているのかもしれない。ただ、ファイルの問題なら、工場出荷時に一度戻しているので復旧しているはずなのだが。

いずれにせよ、パスコードの設定はやめる事にした。誰かに言われた気がしたのだ。正直に生きよと。

今回の出来事。誰とも連絡が取れないまま仕事をしている時が一番辛かった。iPhoneとMacが同時にダメになった時も涙が出そうになった。iPhoneが壊れた事を嘆いていたわけではない。人とのコミュニケーションが絶たれ、想い出が消える事を嘆いたのだ。

iPhoneへの想い。それは人への想いだった。

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