ワンダフル・ライフ



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1909年、米国の古生物学者ウォルコットはカナダのロッキー山脈で未知の化石群を発見した。地層を調査した結果、5億500万年前のカンブリア紀の頁岩と判明し、複数の生物が見つかったことからバージェス動物群と名付けられた。

偉大な発見者となったウォルコットだが、化石の調査では誤ちを犯す。化石を平面的に捉えた結果、バージェス動物群を既存の生物グループに分類したのだ。まるで靴べらで足を押し込むように、既知の動物門に無理やり押し込んだ。

1966年、古生物学者のウィッティットン、サイモン、デレクの三人は、バージェス頁岩の再調査に乗り出す。カメラルシダや光学顕微鏡を使って立体的に精査する事で、バージェス動物群が既存のグループに収まらない、異質な生物である事を明らかにした。

さらに驚きの事実も判明する。三人がそれぞれ調査していた個別の生物が、実は体長120cmにもなる一つの生物だったのだ。名前はアノマロカリス。バージェス動物群の中で最大にして最強の捕食者だった。

そのアノマロカリスも今は存在しない。カンブリア紀から時が進み、6500万年前の白亜紀、地球外物体が地球に衝突し大型恐竜が絶滅した。生き残ったのは哺乳類で、その哺乳類が属する脊椎動物を遡ると、なんとバージェス動物群にいた体長4cmの小さな生物ピカイアに辿り着く。

進化とは、ダーウィンが提唱した競争社会による自然淘汰だけではなく、白亜紀の絶滅に見るように、偶発性が多分に含まれている。生命のテープをカンブリア紀まで巻き戻してリプレイしても、現代のようにホモ・サピエンスが存在している可能性は極めて低い。

地球の歴史を一キロメートルの物差しにたとえると、私たち人類が生きている期間は最後の十数ミリであり、一年にたとえると最後の一秒にすぎない。その一瞬の中で私たちは人生を送っている。

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