セックスを科学する本『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』

20140502231416ジャレド・ダイアモンドアメリカの進化生物学者で、『銃・病原菌・鉄』でピュリッツァー賞を受賞したサイエンスライターだ。フィールドワークをベースにしているため主張に説得力があり、語りかけるような文体と絶妙な比喩が読者を惹きつける。

そんなジャレド・ダイアモンドが書いた『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』が面白かった。

原題は『Why is Sex Fun?』。タイトルだけ見るとセックスの技法や快楽について書いてあるような印象を受けるが、その実は人間の性を進化生物学的に分析した学術本。

人間の性の特徴として、夫婦による長期的な性的関係、夫婦での共同育児、内密のセックス、排卵の隠蔽、女性の性的受容期の延長、女性の閉経、楽しむためのセックスなどがあげられる。

ボノボは大っぴらにセックスをするし、ヒヒはお尻を真っ赤にして排卵を知らせる。哺乳動物のほとんどのオスは子育てをしないし、人間以外のメスに閉経はない。なぜ人間は異質なのか。

以下は閉経について書かれた箇所。

女性は年をとるにつれて... 出産中や出産後に死ぬ確率と、彼女の胎児や幼児が死んだり障害をもつ確率も増大する。事実上、年老いた母親は潜在的な利益にたいして非常に大きなリスクを引き受けている。これらの要因がセットになって、女性は閉経するほうが有利になり、その結果として逆説的ではあるが、子供を産む数を減らすことが、多くの子供を生き延びさせることにつながったのだ。

本書には登場しないが、私は女性のオーガズムにも何らかの意味があると考えている。女性の生殖機能としてはオーガズムは必要ないのに、なぜあるのだろう。神様のプレゼントだろうか。ジャレド・ダイアモンドのように存在理由を科学的に説明できるとよいのだが。

本書の訳者は『教養のためのブックガイド』でも紹介した長谷川寿一教授。単行本は『セックスはなぜ楽しいか』というストレートなタイトルだったそうだ。文庫化にあたって改題し、堂々と大学の講義でも推薦できる本になったとの事。おかげで私も家の本棚に並べる事ができた。

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