日本語を世界共通語に『驚くべき日本語』

20140626201251私たちは世界共通語として英語を学ぶよう教育されているが、その方針は正しいのだろうか。確かに英語を母国語とする人口は中国語の次に多いため、共通語として相応しいのかもしれない。だが、言語学的に見て英語は理解しやすく、合理的な言葉なのだろうか。

驚くべき日本語』で、著者のロジャー・パルバースは、日本語こそ世界共通語に相応しいと主張する。著者は母国語の英語以外に、ロシア語、ポーランド語、日本語を話す作家で、半世紀近くも日本に住んでいる。大島渚の『戦場のメリークリスマス』では助監督を務め、大江健三郎の講演では通訳もこなした。

著者が日本語を推す理由は、少ない語数で豊かな表現が可能な点にある。名詞は「てにをは」を使うだけでどんな格にもなれるし、動詞や形容詞も様々な品詞に変化する。

例えば「言う」という動詞は、言い合う、言い出す、言いふらす、言い返すなど、様々な意味の言葉に変化する。「食べる」という動詞は、食べやすい、食べにくいといった形容詞にも変化する。時制も他の言語のように複雑な変化はなく、基本的に「た」をつけるだけで過去形になる。

また、擬態語での感情表現が豊かで、省略語のバリエーションも多く、敬語による配慮もある。もちろん英語にも丁寧な表現はあるし、ロシア語にも省略語はあるし、ポーランド語にも表現力はある。だが、話し言葉としての日本語は、日本人が思っている以上にシンプルで覚えやすいと著者は説く。

本書を読んで最も驚くのは、著者の日本に対する深い洞察と愛情だ。日本人よりも日本史に精通し、日本人以上に宮沢賢治を読み解く。このような本を読むと、自国の事をもっと勉強せねばと痛感する。

国際的な視野をもつことの第一歩は、自身の言語や文化に対しての視野を国際的にすることです。そしてそのためには、まず日本人が日本語の本質を真に理解することが必要です。
日本の国際化は、英語で始まるのではありません。日本語で始まるのです。

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