動物を飼う前に読むべき本『ソロモンの指環』

20140904214610動物行動学の理論を勉強するつもりで本書を購入したが、いい意味で期待を裏切られた。書かれていたのはコンラート・ローレンツ博士の日常生活だった。ガン、カラス、オウム、イヌ、ネコ、ハムスター、魚など、様々な動物と暮らす博士の、愛に満ちた観察日誌だ。

ソロモンの指環とは、旧約聖書の偽典に登場するソロモン王の指輪のこと。真鍮と鉄でできた指輪で、あらゆる動植物の声を聞く力が与えられる。だが、博士はソロモンの指輪を必要としない。魔法の助けを借りなくても、生きている動物は美しい真実の物語を語ってくれる。

博士は、ヒナが初めて見る物を親だと思い込む「刷り込み」を発見した。それは動物との共同生活の賜物だった。日々の暮らしと観察から教訓を得る。誰もが見ていながら、誰も気づかなかったことに気づく。それこそ研究だと博士は言う。

本書は動物の本質を教えてくれる。

  • アクアリウムは自分自身で平衡を保てる生命共同体。底の砂、水槽の置き場所、温度や光の条件、魚の数と種類、水草の量。これらを巧みに選ぶことにより、一つの生態系が出来上がる。
  • 人が帰ろうと思って立った時だけ挨拶するインコがいる。多くの動物には、人間の目にはわからない、驚くほど小さな動作を知覚する能力がある。
  • あなたが孤独な人間で、心のかよう接触を望んでおり、家の中に誰かがいて帰りを待っていて欲しいなら、イヌを買うといい。
  • ホシムクドリとイヌはレディ・メイドでは買えない。大きくなったイヌを買ってきて、それがほんとうにあなたのイヌになることはごくまれにしかない。
  • 動物が安いとか高いとか、飼いやすいとかは問題ではない。もっとも大切なのは、その動物でどんなことが見られるかということだ。
  • 新しい動物の魅力と美しさのとりこになったとき、人はよく重大な責任のことをほとんど忘れてしまっている。情熱が消えさっても、責任はそのまま残る。

動物には苦い思い出がある。

小学生の頃、親にせがんで犬を飼ったが世話をしなくなり、結局は保健所に連れて行った。最近ではADAに魅了され、水草をレイアウトして魚を飼ったが、結局はコケが繁殖して魚が全滅した。

失敗しないと物事の本質は見えない。だが、蒙を啓く本は経験不足を補う。先日、子供が犬を飼いたいと言い出した。まずはこれを読ませよう。

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