鍵は細部に潜む『炭素文明論』

20141027215317炭素と聞いて最初に思い浮かんだのは、鉛筆の芯でもバーベキューの木炭でもなく、炭素年代測定法だった。化石に残った炭素14を数えて、年代を特定する方法。カンブリア紀など数億年前まで遡ることができるのだから、そのスケールの大きさに圧倒される。

生物の起源を辿るために炭素を調査し、宇宙の起源を探るために素粒子を研究する。マクロを理解するためのミクロ。デザインの世界に「神は細部に宿る」という言葉があるが、科学の世界でも鍵は細部に潜んでいるようだ。

炭素は元素のひとつで、元素記号はC、原子番号は6。炭素は単体だと平凡な存在だが、水素や窒素と結合することで様々な物質に変化する。砂糖、デンプン、香辛料、ニコチン、カフェイン、阿片、エタノール、そして石油。

歴史は突き詰めると利権の争いだ。香辛料を求めて争い、阿片に溺れて国が滅び、石油を巡って人が殺し合う。その原因を追求すると炭素に辿り着いた。『炭素文明論』は炭素の視点で歴史を解体する本。ひとつの元素が世界史を変えた事実に驚く。

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