打ち砕かれる夢『リニア新幹線 巨大プロジェクトの真実』

20141102175308先日、国土交通相リニア中央新幹線の工事計画を認可した。JR東海は来年から着工し、2027年の開通を目指す。完成すれば東京-名古屋間を40分で結ぶ夢の超特急となるが、『リニア新幹線 巨大プロジェクトの真実』はその夢を完全に打ち砕く。

環境面では、電磁波による人体被曝や地下掘削による中央構造線の破壊、原子力発電に頼る電力消費などが問題となる。資金面では、国の年間公共事業費を上回る9兆円の建設費が足かせとなる。人口減少による乗車率の低下や、自社競合による東海道新幹線の減収が予想される。

JR東海の社長自ら「リニア中央新幹線はペイしない」と公言しているのだから、計画推進による減収は必至だ。失敗すればJR東海が破綻する。国の動脈を止めるわけにはいかないので、結局は公的資金が注入される。それなら中央新幹線はリニアではなく、従来の新幹線方式にするべきだと著者は主張する。

私も毎月のように名古屋と品川を新幹線で往復しているが、所要時間が60分短縮されたからといって生産性が大きく上がるとは思えない。車内での時間はそれなりに有効活用できるし、乗り換えの時間が長くなれば元も子もない。リニアへの期待は時間短縮より、新技術への好奇心が大きなウエイトを占めている。

著者はその好奇心に警鐘を鳴らす。目的が曖昧で需要予測が甘いプロジェクトは失敗する。超電導で浮くからといって、世界最速という名目に浮かれてはいけないということだ。

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