読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

トンネルが潰れない理由

Essay

むぎゅっとなっているからだ。

砂時計を想像して欲しい。円錐形のガラスを上下にひっくり返すと、中央の小さい穴からさらさらと砂が落ちるてくる。最後まで砂が落ちるとめでたくラーメンが食べられるのだが、よくよく観察すると砂の落ちるスピードが一定であることに気づく。砂の量が多くても少なくても、常に同じ速度で落ちてくる。

水だと話が変わる。ちょっと下品だが、トイレでするあれを想像すると分かりやすい。はじめのうちは量が多く、圧力が高いので出るスピードが速い。少なくなると圧力が弱くなり、速度が遅くなる。水の量は時間の長さの2乗に比例する。1分の時計を2分にする場合、砂なら2倍の量で済むが、水は4倍の量が必要になる。

なぜ砂の落ちる速度は一定なのか。それは、どの高さでも同じ圧力が側面にかかっているからだ。高さ100センチの円錐に砂が詰まっている場合、上から10センチのところでも下から10センチのところでも、同じ圧力が横方向にかかっている。重さに関係なく、どの場所でも内部で押し合いへし合いをして支え合っている。

混雑しているエレベーターや電車を想像して欲しい。ドアが開き、みんなで一斉に外へ出ようとすると出口で詰まる。両腕を前に出し、肩をすぼめてすみませんと声をかける。いえいえ、ではまた。あ、すみません、といった具合に、出口だけでなくどの場所でも、隣り同士で詰まっている。

トンネルは穴の周囲をコンクリートで覆い、岩盤とつなげて強度を保っているが、それだけであんな巨大な山が崩れないわけがない。子供の頃、砂場で作ったトンネルを思い出す。どの高さでも砂同士がすみませんすみませんと言いながら押し合っている。内部でむぎゅっとなっている。だから潰れないのだ。


参考書籍

砂時計の七不思議―粉粒体の動力学 (中公新書)

砂時計の七不思議―粉粒体の動力学 (中公新書)