Macで電子書籍を作るならHagoromoが最適 〜 縦書き・目次・epub対応のエディタ
年末に『グラビトン』と『読みやすい文章を書くための技法』を続けて出版した。電子書籍を作るのは初めてだったので試行錯誤の連続だったが、Macでepubファイルを作る環境が整ってきたので紹介したい。
▼ エディタの条件
電子書籍を作るにあたって、私がエディタに求めていた機能は次の3つ。
- 縦書き表示
- 目次の作成
- epubの出力
候補として上がったアプリはAppleのPages、MicrosoftのWord、そしてArtman21のHagoromo。
Pagesは「目次の作成」と「epubの出力」に対応しているが、「縦書き表示」が対応していなかった。Wordは「縦書き表示」と「目次の作成」に対応しているが、「epubの出力」が対応していなかった。
WordファイルならRomancer、テキストファイルならでんでんコンバーターでepubに変換することもできるが、原稿をウェブでアップロードすることに抵抗があった。
その結果、すべての条件を満たしているエディタ『Hagoromo』を購入した。
▼ Hagoromoの特徴
開発元のページで紹介されている特徴はこちら。
Hagoromo は主に日本語を編集するためのリッチテキストエディタです。
独自開発のテキストエンジンを装備し、標準テキストエンジン(NSTextView)では難しかった軽快な縦書き編集、原稿用紙モード、ルビ、縦中横、圏点など日本語編集に欠かせない機能を実現しています。
また、文書の全体の構造を定めてから細部を編集していくのに便利なアウトラインプロセッシング機能をサポートしています。
もちろん、エディタとしても Jedit X なみの検索、置換機能を備え、iCloud、フルスクリーン編集、自動保存、バージョン管理、バージョン比較などにも対応しています。
アウトラインプロセッシングとは、階層構造を作りながら編集することを指す。目次であれば「第一章 第一節 第一項」のような階層を作って、その配下に本文を書いていく。
アウトラインプロセッシングでは「親・子・弟・レベル0・レベル1」といった用語が登場するが、私のようにアウトラインに慣れていない人には理解しにくい。そこで、実際に目次を作る方法を説明したい。
▼ 目次の作り方
まず最初に、メニューから「Hagoromo → 環境設定 → アウトライン → 各レベルの設定」を選択し、「レベル1〜5」の設定を次にように変更する。
- 行頭記号/数字 → space
- 行頭に親レベルのリストマーカーも表示 → チェックを外す
階層構造を作ると通常は行の先頭に「・」などのマーカーが付くが、書籍の目次にする場合は「space」に設定して消すといい。
「レベル」は階層構造の深さを表す。Hagoromoでは以下の紐付けになっている。
レベル番号 | 親子関係 | 目次の例 |
---|---|---|
レベル0 |
親 |
第一章 |
レベル1 |
子 |
第一節 |
レベル2 |
弟 |
第一項 |
設定画面にはレベル3〜5もあるが、epubファイルで目次にできるのはレベル0〜2だ。
▼ 「レベル0 親 第一章」の設定方法
親レベルを作るには、一行目に「第一章〜」と書いた後、一行目にフォーカスがある状態で「アウトライン」メニューから「子を追加」を選択し、二行目で「第一節〜」と続ける。
iPhoneなどのアプリで書いてからHagoromoに文章をコピーすることもある。そのように、既にある文章に対して親レベルを設定する場合は、二行目の「第一節」にフォーカスを当てて、「アウトライン」メニューから「小レベルへ移行」を選択する。そうすると一行目の「第一章」が親レベルに移行する。
▼ 「レベル1 子 第一節」の設定方法
子レベルを作るには、二行目の「第一節」がフォーカスされている状態で、「アウトライン」メニューから「子を追加」を選択し、「第一項」と続ける。
既にある文章に対して子レベルを設定する場合は、二行目で改行して三行目の「第一項」を書いた後、二行目の「第一節」にフォーカスを当てて、「アウトライン」メニューから「親レベルへ移行 → 小レベルへ移行」と選択する。
三行目の「第一項」を弟レベルに設定する場合は、三行目にフォーカスがある状態で「アウトライン」メニューから「子を追加」を選択する。「子の次は弟」という感覚があるが、ここでは「フォーカスしている行が親」と考えるので、選択するアクションは「子を追加」になる。
「第一項」の次の行から本文を書く場合は、第一項の行で「子を追加」を選択する。そうするとフォーカスが次の行に移動して、自動で字下げされる。
▼ epubファイルの出力方法
文章を書き終えたら、「ファイル」メニューから「ePubとして書き出す」を選択する。
ここで入力する「タイトル」と「著者」は、表紙の次のページ、つまり「扉」のページになる。タイトルは扉ページの中央に大きく表示され、著者はタイトルの左下に配置される。
ただ、iPhoneなどの小さい画面で見ると、タイトルが左にずれ著者名が次のページに移動していることがある。そのため、Hagoromoでは「カバーイメージ」に表紙画像を設定しておくといい。
カバーイメージに表紙画像を設定すると、それが扉ページになる。Kindle、楽天Kobo、iBooksにepubファイルをアップロードする際も表紙画像を設定するが、その表紙画像は各ストアに並んだ際のサムネイル画像と考えるといい。
尚、Hagoromoではカバーイメージを設定しても「タイトル」の入力は必須だ。タイトルは「目次」の次の行と、本文ページのヘッダーにも表示される。
▼ 目次の設定方法
Hagoromoは目次のページを手動で作るのではなく、epubファイルに出力するタイミングで、親や子が自動で目次になる。
先の設定画面で「アウトラインから目次を作成する」を選択して、目次と改ページの項目にチェックを入れる。
目次の項目では「レベル0 レベル0−1 レベル0−2」が選べる。
- レベル0 → 「第一章」だけが目次になる。
- レベル0−1 → 「第一章 第一節」が目次になる。
- レベル0−2 → 「第一章 第一節 第一項」が目次になる。
改ページの項目も「レベル0 レベル0−1 レベル0−2」が選べる。
- レベル0 → 「第一章」で改ページする。
- レベル0−1 → 「第一章」と「第一節」で改ページする。
- レベル0−2 → 「第一章」と「第一節」と「第一項」で改ページする。
▼ 最後に
Macで電子書籍を作るなら現時点ではHagoromoが最適だ。「縦書き・目次・epub」の条件を満たしているのはHagoromoしかない。
手動で挿入した改ページがepubに反映しなかったり、手動で設定した字下げが保存されない等の問題はある。ただ、そのような細かい問題を吸収できるぐらいHagoromoの使い勝手はいい。ユーザーインターフェイスはシンプルだが、痒いところにちゃんと手が届く。
現在の価格は2,200円。文章を書くことを仕事にしている人や、これから文章を書くことを仕事にしたい人。そんな人ならこの価格も納得できるはずだ。
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