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バイオソーシャル課 〜 犯罪防止の未来像

Essay

暴力の発生メカニズムが気になり関連書籍を何冊か読んだのだが、その中の一冊『暴力の解剖学』に、未来の理想像が描かれていた。暴力の兆候がある人に対して脳の画像を撮影したり脳波を測定し、バイオフィードバックを利用して攻撃性をコントロールするというものだ。

神経活動を色で示すポジトロン断層法(PET)で脳を撮影すると、眼窩前頭皮質が通常は赤色になるが、殺人者は寒色系の青色になる傾向がある。また、殺人者の脳波は眠っている状態に近いシータ波が多く見られる。通常なら恐怖を感じて手に汗をかいたり心拍数が上がる場面でも、サイコパスは総じて反応が薄い。

バイオフィードバックは、普段は気づかない身体の兆候を本人に知覚させる技術で、心拍数や脳波をセンサーで検出し、音や光に変換して認識させる。たとえば対象者にゲームをしてもらい、覚醒度が低い状態と高い状態の違いを認識させた後、高い状態を維持するよう訓練する。未熟な脳の皮質を鍛錬し、覚醒度の高い正常な脳にする。

この脳解析とバイオフィードバックを利用して犯罪を予防する「バイオソーシャル課」の設置を私は提案したい。アニメ『PSYCHO-PASS』では人の精神を数値化して犯罪者を検挙していたが、「バイオソーシャル課」は検挙する前の段階で予備軍を割り出し、犯罪を未然に防ぐことを目的とする。

管轄は国でも警察でもいい。PET画像や脳波のサンプルを収集し、犯罪者の傾向性を特定する。全国民に毎年の健康診断を義務付け、脳を解析して暴力予備軍を検出する。予備軍は国の費用でバイオフィードバック治療を受け訓練する。

人は幼児期のストレスで脳の扁桃体が縮小すると、感情がコントロールできなくなり暴力的な大人になることがある。ストレスがなくても、脳腫瘍などで前頭前皮質が圧迫されると攻撃性がコントロールできなくなることがある。誰でもサイコパスになる可能性があるのだ。

「バイオソーシャル課」が機能すれば、警察や刑務所に使う税金を減らせる。犯罪の事後処理に使うぐらいなら、予防に投資したほうがいい。愛する人を暴力で失う確率も減る。他人の暴力だけではない。脳の状態によっては自分や家族が殺人者になる可能性もある。

脳で人を選別する「バイオソーシャル課」は、人権の保護が課題になるかもしれない。だが、無差別テロや幼児虐待死のニュースを見るといつも思うのだ。未然に防ぐことはできなかったのかと。

暴力の解剖学: 神経犯罪学への招待

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