読みやすい文章を書くための技法
読みやすい文章とは、流れるように読める文章だ。難しい言葉はいらない。気のきいた言葉もいらない。文頭から文末まで振り返ることなく読める文章が、最も美しい。
読みやすさの基準は客観的なものだ。読み手には様々な人がいる。老若男女すべての人に対して読みやすい文章を書くのは難しい。ただ、綺麗な文章を書こうとする意識は持ちたい。
文章を書く上で意識すべき技法を紹介する。
常体と敬体
常体とは「だ・である」調の文章であり、敬体とは「です・ます」調の文章を指す。それぞれにメリットとデメリットがある。
常体は、自分の意思を力強く伝える事ができるが、我の強い文章になる。敬体は、優しい印象で共感を得やすいが、まわりくどい文章になる。
常体と敬体を織り交ぜて書く手法もある。まずは自分で試してみて、書きやすい文体を見つければいい。
文章の始まりは短く
最初の一文は短いほうがいい。インパクトがあり、主題が明確になる。
例えば以下の文章。
速さは重要な要素だ。
Twitterは個人的感情や社会的情報が滝のように流れる。速度のある文字や画像の中から、瞬間的に獲物を捕らえる必要がある...
冒頭を引用や画像から始めたり、タイトルとは関係ない内容から書き始めるのも面白い。
PREP法
結論から先に述べる文章術をプレップ法と呼ぶ。導入部で主張を明確にする事により、読み手は安心する。
- POINT(導入結論):○○に関しての結論は○○
- REASON(理由):なぜならば○○だから
- EXAMPLE(具体例):具体的には○○
- POINT(最終結論):よって○○の結論は○○となる
例えば以下の文章。
Twitterは楽しい。そこには非日常の世界があるからだ。政治家や芸能人、ブロガーや友達。雑多な人たちの思いがタイムラインに流れてくる。日常の合間に非日常を感じる事ができる。だからTwitterはやめられない。
言葉を削ぎ、順序を入れ替える
推敲する時は、言葉を継ぎ足すのではなく、削ぎ落とす事を意識する。簡潔な文章のほうが読みやすい。
同時に主語、目的語、述語の順序も模索する。
例えば以下の文章。
現実には不可能な手法や結果を実現する力が魔法である。
現実には不可能な結果を実現する力を持っているのがTouchRetouchだ。
意図せず写り込んだ人影や、外したい余分な物体を簡単に消す事ができる。
魔法とは、現実には不可能な手法や結果を実現する力の事である。
TouchRetouchは、現実には不可能な結果を実現する力を持っている。
意図せず写り込んだ人影、外したい余分な物体、それらを簡単に消す事ができる。
どちらも文法的には間違っていないが、後者のほうがリズミカルに読めるはずだ。
文章の流れを考慮しながら、適切な言葉の順序を見つける。
同意語の工夫
同じ単語を繰り返すと単調な文章になる。
例えば、冒頭・文頭・出だし・最初の一文。同じ意味でも様々な言い方があり、これらを織り交ぜることで、繰り返しを避ける。
自分で思い浮かばない時は、類語辞典を利用すればいい。
マイナス・プラス法
ある商品にマイナス面とプラス面があるとする。その商品を紹介する際、最後にマイナス面を書くと、読み手にはネガティブな印象が残る。だからと言ってマイナス面から書き始めても印象が良くない。
プラスで書き始め、マイナスを挿入し、最後にプラスで締めるのがよいだろう。
肯定表現
例えば、「我が強い人」は「自分の意見を持っている人」と言い換える事ができる。「優柔不断な人」は「慎重な人」と言い換える事ができる。
読み手を意識し、不快な表現はできるだけ避けたほうがいい。
説得技法
文章を書くという事は、相手を説得する事と同じだ。相手と交渉するつもりで主張を展開する必要がある。
- 功利的説得:相手が得をする行動を勧める
- 規律的説得:相手のモラルに訴える
- 情緒的説得:相手の感情にアピールする
ある商品を紹介するところを想像して欲しい。
- 功利的説得:その商品がセール中であることを説明して、得をする事を伝える。
- 規律的説得:相手の立場を利用して、その商品を持つ必要がある事を訴える。
- 情緒的説得:その商品を手にすれば感動する事を伝える。
接続語は適度に
さて・そして・そこで・また・しかし。このような接続語は、使いすぎると文章の流れが途切れる。使い方に迷った場合は、おもいきって削除してみるといい。
例えば、今回の記事の導入部。
読みやすい文章とは、流れるように読める文章だ。(×そこには)難しい言葉はいらない。(×また、)気のきいた言葉もいらない。文頭から文末まで振り帰る事なく読める文章が、最も美しい。
(×そして)読みやすさの基準は客観的なものだ。読み手には様々な人がいる。(×だから)老若男女すべての人に対して読みやすい文章を書くのは難しい。ただ、綺麗な文章を書こうとする意識は持ちたい。
(×ここで)文章を書く上で意識すべき技法を紹介する。
ひらがな、カタカナ、漢字の変換、句読点の挿入
漢字をあえて平仮名にする事も、読みやすい文章を書く上で有効だ。全体の雰囲気を考えて、平仮名を片仮名にしてみるのもいい。
読点(、)は読む際の息継ぎとなる。読み返した際に、区切りをつけたいところに読点を挿入すればいい。
句点(。)で短く区切ると、テンポのよい文章になる。
最後に
文章を書く力は生まれつきのものではない。努力する事により、読みやすい文章を書けると信じたい。読み手を意識し推敲を重ねれば、おのずと綺麗な文章になるはずだ。
私は美しい文章を書けるわけではない。プライドを持って推敲を重ねているだけだ。
夏目漱石は言う。
死ぬまで進歩するつもりでやればいいではないか。
作に対したら一生懸命に自分のあらんかぎりの力をつくしてやればいいではないか。
後悔は結構だが、これは自己の芸術的良心に対しての話で、世間の批評家やなにかに対して後悔する必要はあるまい。
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