電子書籍の憂鬱
私は電子書籍である。名前はまだ無い。
日本ではここ数年の間で電子書籍が普及した。出版社の意向で電子化されていない本もまだまだあるが、iPadやKindleの普及に伴い点数は順調に伸びている。だが、電子書籍は様々な問題を抱えている。
今回は、RyoAnnaというユーザーを例にとり、電子書籍の根本的な問題を指摘したい。
RyoAnnaは『アインシュタイン丸かじり』や『シュレティンガーの哲学する猫』など、雑多な電子書籍の中から、なかなかの良作を探してくる。ときおり道を外す事もあるようだが。
先日彼は『銃・病原菌・鉄』という人類史の電子書籍を読んでいた。家畜や食物が、何千年もの時間をかけて伝播していく過程を丁寧に検証した良書で、RyoAnnaはそのスケールの大きさに随分と感動したようだ。
だがRyoAnna、君はこのような良書を自分の子供へどのように伝えようと思っているのだ。13000年の間に伝播された銃や病原菌にロマンを抱くのもいいが、まずは自分の子供に感動を伝える必要があるだろう。
『銃・病原菌・鉄』が紙の本なら、子供が大きくなったら渡せばいい。だが電子書籍はデータだ。受け渡しができない。Kindleのアカウントは6台の端末で共有できるが、君はあの書棚を自分の子供に見せる事ができるのか。
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