記憶にまつわる七つの事実『記憶力を強くする - 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』
インドに優秀なIT技術者が多い理由は、初等教育で20×20までの暗算を覚えるからだと言われている。覚え方はメロディをつけて歌う詠唱で、生物は元来、目よりも耳が発達していたため、声に出したほうが記憶に残りやすいそうだ。
そんな詠唱などの効果を『記憶力を強くする - 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』は脳科学の視点で立証する。タイトルこそハウツー本だが、内容はれっきとした学術本。
人は記憶する時、最初に大脳皮質の側頭葉から海馬に信号を送る。海馬は信号を整理しながら1ヶ月ほど情報を蓄え、その後に側頭葉に戻して長期保存する。このような流れをシナプスなどの写真と共に解説し、記憶の仕組みを紐解いていく。
例えば、
- 寝る子が育つのは、夢が脳の情報を整え、記憶を強化し保存するからであり、
- 1ヶ月以内の復習が効果的なのは、記憶を仕分けする海馬の保存期間が1ヶ月で、そこに情報を再送信することで、側頭葉に長期保存を命令するからであり、
- 小学生で掛け算の九九を覚えるのは、意味記憶がよく発達している時期だからであり、
- 歳と共に記憶力が低下するのは、神経細胞が減少しているからではなく、感動する機会が減り、扁桃体の使用率が減少するからであり、
- 東大生の記憶力が良いのは、7個程度と言われている短期記憶の限界をグループ化して増量させたり、連合性や法則性を持たせているからであり、
- 1週間後、3週間後、1ヶ月後の反復学習が記憶の定着に最も効果的なのは、エビングハウスの忘却曲線に照らし合わせた結果であったりする。
- そして最も驚いたのは、人の頭を叩くと数千個の神経細胞が死ぬという事実。一部の細胞を除いて、脳の神経細胞は一度死ぬと増殖しない。子供の頭、叩くべからずだ。
他にも記憶にまつわる数多くの事実が登場する。脳の基礎を知り、記憶の仕組みを理解してコツをつかみたい。そんな方へ。
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