デザインの7か条『誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論』



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USBメモリをパソコンに挿すと引っかかる事がある。コネクタの半分が空洞、半分が突起になっているため、2分の1の確率で引っかかる。これは、マークやランプを上に向けて挿さないユーザーが悪いのだろうか。『誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論』の著書ノーマンは、このような事例をデザイナーの問題だと主張する。


ノーマンによるデザインの7か条。

  1. 外界にある知識と頭の中にある知識の両者を利用する。
  2. 作業の構造を単純化する。
  3. 対象を目に見えるようにして、実行のへだたりと評価のへだたりに橋をかける。
  4. 対応づけを正しくする。
  5. 自然の制約や人工的な制約などの力を活用する。
  6. エラーに備えたデザインをする。
  7. 以上のすべてがうまくいかないときには標準化をする。


例えば、4番の「対応づけ」の悪い例は、部屋の電灯スイッチ。一般的なスイッチは縦と横に4つ並んでいるが、実際の電灯の配置とは一致していないため、どこを押すとどこが点灯するのか覚えられない。だが、デザインと利便性はドレードオフの関係にある。スイッチにラベルを付けると外観が悪くなるし、電灯の配置と合わせるとスイッチケースが特注になりコストがかかる。

5番の「制約」はLEGOのブロックに当てはまる。子供が説明書を見ずに組み立てられるのは、ブロックの形や穴に制約があり、組み合わせが限定されているからだ。また、公共トイレの物置にも工夫されたものがある。個室の側面にフラップ式の物置を付けておき、荷物を持たないとドアを開けられないように制約する。忘れ物を防止する気の効いたアイデアだ。

そして7番の標準化。例えばiPhoneの電源を落とす時は、本体右上のボタンを長押しするが、これは予備知識がないと分からない。デザインはシンプルでいいが、親切ではない。それでも発売当初から一貫して「対応づけ」をする事で、標準化しようとしている。

USBコネクタは、ここ数年で両側対応のものが登場した。USBが普及し始めたのは2000年頃のため、10年以上経ってようやくデザイナーが解決策を提案したわけだ。iPhoneの通信ケーブルも、当初は30ピンのコネクタで一方向にしか挿せなかったが、iPhone 5のLightningケーブルから、どちらの向きでも挿せるようになった。

良いデザインは進化する。ユーザーは意見を言わなければいけないし、デザイナーはできる限りラベルに頼らず、エラーを想定し、制約を活用しなくてはならない。

オフィスの電話やエアコンの操作パネル、公共施設のドアノブや水道の蛇口、家庭のビデオリモコンや電子レンジの操作パネル、さらにはアップルのMacまで。本書は、豊富な具体例をもとにデザインの問題と解決策を提示する。

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