世界は数学でできている『数学する本能』

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自然という偉大な本を読むには、その本が書かれている言語を知らなければならない。そしてその言語は、数学なのだ。ー ガリレオ・ガリレイ


紀元前3300年〜2000年頃。シュメール人は自分の財産を管理するために、金属やパンなどの所有物を、小さな粘土細工に置き換えて数えていた。所有物の量が変わる度に粘土細工を作ったり壊したりしていたのだが、機転の効くシュメール人が、粘土板に印を付けると数が確認できることに気づいた。その瞬間、記号を使った言語活動が始まり、抽象的な数が生まれた。

数学するのは人間だけではない。

砂漠のアリは非天測位置推測法を利用して一直線で巣に戻り、海のロブスターは地理的位置探査システムを使って巣に戻る。サケは太陽と月の位置で方向を計算し、渡り鳥は星の回転軸で方角を特定する。コウモリは高周波の反響定位システムで獲物を捕らえ、フクロウは高さの違う左右の耳で三角測量を行なう。犬は解析学でフリスビーの落下地点を予測し、ネコは偏微分方程式を使って落下時にバランスを取る。そしてミツバチは、二次元幾何学を使って正六角形の巣を作る。

数学は本能なのだ。

私たちが数学に苦手意識を持つのは、学校数学が抽象的で観念的だからだ。露天商がお釣りを計算するのとは違い、学校では実際の数や量とは無関係に、同じ順序で同じことを行なう。無意味な記号と無意味な手順を覚えようとするから悪戦苦闘する。数学を習得できるかどうかは、自分が操作する記号や手順に、どの程度意味付けできるかにかかっている。

数学する本能』を読むと興奮する。人間以外の動物は言語を持たないため、抽象的な数学をしているわけではないが、自然な数学をしている。動物だけではない。花びらの枚数はフィボナッチ定数が関係しているし、自動車は数学をしながら走っている。この本の結びは数学の能力を伸ばす方法だが、前振りとして登場する生物や植物の話が面白い。世界が数学でできている事を感じるはずだ。

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