自分で考えることの大切さ『知的複眼思考法』

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古代ギリシャから現代まで、偉大な巨人たちが様々な本を書いてきた。哲学、科学、数学など、あらゆる分野で真理は既に存在する。研究者たちは、既存の理論を知らずに主張すると批判される。それは誰々が既に書いている、そんな事も知らないのかと。では、私たちは既知の物事をすべて学ばないと、オリジナルな発想ができないのだろうか。

知的複眼思考法』は、自分の頭で考える事の大切さと、その方法を教えてくれる。常識にとらわれず、相対化する視点を持つこと。批判的な読書を通じて、物事に疑問を感じること。仮想の立場を複数設定して、それぞれの立場から批判を試みること。ひとつ違うレベルに立って、問題自体をずらして見ること。これらが複眼的に思考する上で重要なポイントとなる。

本書にはトレーニングのための設問も登場するが、著者の苅谷教授は教育社会学が専門のため、具体例が教育分野に偏っている。いじめ問題や偏差値問題など、読者によっては興味が持てず、頭に入ってこないかもしれない。だが、設問のサンプルはそれほど重要ではない。大切なのは、自分で考える意識を持つことにある。

本や記事を読めば知識はつくが、それはあくまで前提であり、真の目的は考える力を養うことにある。例えばブログなら、他人の考えや発見をコピーしてアクセスを稼いでも、手に入るのは広告収入だけで、後に残るものは何もない。重要なのは、そのテーマに対して自分の頭で考え、論理的に主張することだ。

文章なんて無意識のうちに引用を繰り返しているだけだ。既存の真理をすべて知るなんて到底無理だ。突き詰めるとオリジナルなんて存在しない。これらは言い訳に過ぎない。批判を恐れてはいけない。流されてはいけない。思考を停めてはいけない。学問の分野でもビジネスの分野でも、自分が存在する意義は、自分で考えて主張することにあるのだから。

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