リバース・エボリューションの世界『恐竜再生』

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    ハンスたちはまず、成長のある段階で尾の先端を切り取り、それをタングステンの細いワイヤーでもっと先の段階の尾につなぎ留め、尾の成長の初期に作用する成長因子が、ステージ29で出される終止シグナルを無視できるかどうかを確かめた... 〜 ジャック・ホーナー『恐竜再生』


1993年に公開されたスピルバーグ監督の映画『ジュラシック・パーク』は、恐竜が蘇る設定とリアルな映像が観客の心をつかみ、瞬く間に大ヒットを記録した。

恐竜の血を吸った蚊が琥珀に閉じ込められ、科学者がDNAを複製してクローンを作る設定は、マイケル・クライトンの原作小説をそのまま活かしている。

科学は時折、フィクションの後を追う。ジュラシック・パークの後、ゲノムを解析したり胚を分子レベルで操作することで、恐竜再生が現実になろうとしている。

恐竜再生』は、そんな恐竜復活のドラマを描いたサイエンス・ノンフィクション。著者はジュラシック・パークを監修した恐竜学者、ジャック・ホーナー。


目次
第1章 ヘル・クリーク 時間と空間と、過去に向けての発掘
第2章 それはメスだ! T・レックスの骨髄骨
第3章 分子も化石になる 古代の骨に隠された生化学物質
第4章 身近な恐竜たち ニワトリをはじめとするT・レックスの親戚たち
第5章 赤ん坊はどこから来るのか 卵の中に眠る祖先たち
第6章 鳥に尾を振らせる 縮む背骨
第7章 逆行進化 絶滅種の再現実験
付録 チケノサウルスの骨格


恐竜は化石の記録に現れてから、1億4000万年にわたって様々な形状や行動様式を見せた後、ほとんどが姿を消し、一つの系統だけ残った。それが鳥類だ。

著者はニワトリに注目した。

胚の発生過程を追うと、発育中の翼の先端に5つの芽が現れ、いったん伸びてから消えることが分かった。このプロセスを解明すれば、物をつかむ前肢を残すことができる。

尾は、成長を指揮している細胞の集まりが突然崩壊し、別の隆起がすぐ近くで起こることが分かった。このシグナル伝達因子を解明すれば、長い尾を残すことができる。

こちらはジャック・ホーナーのTEDの映像。



冒頭の写真はニワトリと、ニワトリに尾と前肢をつけた想像上の恐竜だ。『恐竜再生』が書かれた時点では歯を生えさせるところまで実現している。

発生のプロセスを逆転させ、祖先の特徴を蘇らせることをリバース・エボリューションと言う。

いつか子供に恐竜を見せてやりたい。

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