レゴを見る目が変わる本『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』
レゴには不思議な魅力がある。子供にとっては組み立てる楽しさがあり、大人にとってはオブジェとしての価値がある。大人にとっても創造する楽しさがあり、完成された製品ではなく、自由にアレンジできるところに最大の魅力がある。
そんなレゴのブランド力は揺るぎないものだと思っていたが、2003年に売却寸前まで経営が破綻したそうだ。子供の生活がアナログからデジタルに変化し、ブロックというおもちゃは試練にさらされた。新規のプロジェクトがことごとく失敗し、イノベーションを急ぐあまりレゴらしさが失われた。
そこでCEOに抜擢されたクヌッドストープは、再建の第一段階として次の方向性を打ち出した。
第一は、製品に使われるパーツ数や開発にかける期間をともに半分にするなど、コスト削減策を進めて、レゴのビジネスをシンプルにすること。第二は、(子どもたちではなく)小売店を第一に考える 〜在庫回転率を高め、小売店の利益を増やす〜 ことで、競争力を取り戻すこと。第三は、レゴブランドなどの資産の売却や社内のあらゆるコストの削減によって、キャッシュを獲得すること。
小売店を第一に考えるとあるが、これは再建の初期段階だからであり、決して消費者を無視したという意味ではない。製品を開発するのではなく体験を開発する。どのようなおもちゃを創れば子供が楽しく遊べるか。レゴはデザインに利益率という制限を課しつつ、デザイン思考を実践し新製品を開発した。
『レゴはなぜ世界で愛され続けているのか』を読むとレゴを見る目が変わる。レゴがどのようにして100年近くも子供を惹きつけてきたのか。なぜ顧客や自社の歴史とのつながりを失い、倒産寸前まで追い込まれたのか。どのようにして経営陣は存亡の危機から救ったのか。普段あまり表に出てこない、レゴという会社の物語が描かれている。
世界でもっとも革新的な企業は、もっとも統制の厳しい企業でもある。基本部分を完全にコントロールできて初めて、ほんとうに革新的なことができる。
本書を読んだ後にレゴを見ると、ブロック一つに込められた思いを感じるはずだ。
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