日本の未来やいかに『100年予測』

20140617192526未来予測は面白い。いくら荒唐無稽で根拠のないものでも、当たるか外れるかは誰にも分からないからだ。まだ起きてない未来は誰に対しても平等に存在している。素人でも専門家でも予測である事に変わりはない。だが、専門家は当たる確率を引き上げる。

ジョージ・フリードマンは、地政学や科学技術、人口、文化、軍事などの動向を分析し、今後100年の世界情勢を予測する。地政学とは地理的な優劣で政治を分析するもので、ジャレド・ダイアモンドが主張する東西ユーラシアの優勢論も、地政学を拠り所にしたものだ。

影のCIAと呼ばれるジョージ・フリードマンは、アメリカに対抗し得る国として、日本、トルコ、ポーランド、メキシコを上げる。その中でも特に、日本の分析に多くのページを割く。

日本が大きな社会変革を経ても基本的価値観を失わずにいられるのは、文化の連続性と社会的規律を併せ持つからである。短期間のうちに、しかも秩序正しいやり方で、頻繁に方向転換できる国はそうない。日本はそれが可能であり、現に実行してきた。

日本は軍国主義が復活し、2050年に宇宙戦争を仕掛けるそうだ。月の裏側に建設した基地から攻撃を開始し、アメリカの宇宙ステーションを破壊する。

破壊を確認した日本は、直ちに第二段階を始動させた。数千機の極超音速無人機(小型で高速、敏捷なため、迎撃機をかわすことができる)を、アメリカ本土および太平洋上の艦船や基地に向けて発進させたのだ。攻撃目標はアメリカの極超音速機と地対空ミサイル、そして指揮統制センターである。人口密集地は攻撃しない。何の成果も得られないし、多数の民間人犠牲者を出せば日本の望む交渉による解決は困難になる。それに大統領やホワイトハウスのスタッフに壊滅的な攻撃を与えるのは、日本の望むところではない。交渉には相手が必要なのだ。

それに対しアメリカは、宇宙の太陽光で発電した電力をマイクロ波に変換して地上に送る。日本は地上戦で電力を断たれているが、アメリカは陸軍のパワードスーツに宇宙から電力を供給する。この辺りのスリリングな展開は、村上龍の『五分後の世界』を読んでいるようだった。

ジョージ・フリードマンが『100年予測』で語るのは戦争だけではない。人口動態や政治、科学技術や環境変化など、具体的な数字をベースに現状を分析し、様々な分野の未来を予測する。

ちなみに私は日本が軍国主義を復活させることはないと思っている。第二次世界大戦の記憶が薄れているとはいえ、二度と核爆弾を投下されたくないという思いは国民の総意のはずだ。では、100年後の日本はどうなっているのか。

私は、海面の上昇により国土が極端に減少していると予測する。現在と比較すると国土の半分程度が失われているが、出生率も下がっているため人口密度は上がらない。高齢化で一時的に労働力は不足したが、定年制度の廃止と、少子化による教育精度の向上により、経済大国としての地位は揺るがない。自動車産業をベースにロボット工学が発展し、世界に歩兵用のパワードスーツを輸出している。

的を射ているか外しているか。未来予測は議論を呼ぶから面白い。

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