空想と現実『ガリレオの指』

20140807211059科学にスキャンダルはつきものだ。1989年、フライシュマン教授とポンズ教授は常温での核融合に成功したと発表した。安価で簡易な次世代エネルギーの誕生が期待されたが、その後の追試験で全く再現しなかったため、至るところからバッシングを受けた。最近ではSTAP細胞の発見が同じような結末を迎えようとしている。

このようなスキャンダルは、三面記事として扱うだけでよいのだろうか。

科学に初めて検証という概念をもたらしたのはガリレオだった。それまでは宗教や権威の意向に沿った考え方が世界の本質だと伝えられていたが、ガリレオは実験や観測で得られたものこそ真理だと唱えた。『ガリレオの指』は、進化やDNA、量子や宇宙論など、10の分野に受け継がれたガリレオの意志について解説してくれる。

著者は逆説的な事も言う。

科学に潔癖さを求める人なら当然するように検証不可能性を絶対視してしまうと、基本的なものを発見するという点では科学の進歩が止まってしまうおそれがあるのだ。

アインシュタインの言葉を思い出す。

空想は知識より重要である。知識には限界があるが、想像力は世界を包み込む。

STAP細胞も捏造が事実だとしたら問題だが、遺伝子不要の万能細胞が見つかれば再生医療は大きく飛躍する。時には前提から始める演繹的な手法も必要だ。科学だけではなく一般的な仕事にも同じ事が言える。目の前の現実だけ見ていてはブレークスルーは起こせない。

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