戦後100年を迎えた時『「大日本帝国」崩壊』
私は1970年代生まれなので、昭和天皇の記憶はおぼろげながら残っている。といっても若々しく活動する姿ではなく、年号が変わる直前のご老体の印象だ。そんな天皇が44歳の時、つまり1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、第二次世界大戦に終止符を打った。
『「大日本帝国」崩壊』では、8月14日に行われた御前会議における、天皇の発言が紹介されている。
- 戦争継続は国土も民族も国体も破滅してしまう、これ以上国民を苦しめるわけにはいかない、反対の意見の者も私の意見に同意してほしい、国民に呼びかけることがあればマイクの前にも立つと述べた。天皇の発言の途中から出席者の咽び泣きがはじまり、また天皇も涙を流した。
本書は、降伏間際に内閣と天皇がとった行動を生々しく描く。また、大日本帝国の植民地だった満州、朝鮮、台湾が、日本の敗戦後にどのように変化したのか丁寧に分析する。著者の主観を前面に押し出すのではなく、客観的な事実を積み重ねているところがいい。
著者は後書きでようやく感情を表に出す。
- 2005年に戦後60年を迎えたとき、「あの戦争」が同時代の記憶として語り継がれる最後であって、戦後70年は記憶としてではなく、歴史として語られるようになるだろうと思っていたが、実際にそんな時代の変わり目に立ちあうと、いいようもない寂しさに襲われた。
歴史は繰り返す。
日本は東アジアを植民地化し、米国と激しい戦闘をした。にもかかわらず終戦後に方向を180度転換し、平和主義の経済大国になった。これだけ変わり身が早いと、逆もまた然りだ。
戦後100年にあたる2045年には、戦争を体験した者が一人も居なくなる。経験がないと人は好奇心に駆られる。好戦的な指導者が現れたら一気に方向転換するかもしれない。
世論が武力行使に流れた時、あなたがとる行動は?
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