明快な文章を書く技法『理科系の作文技術』
明快な文章とは切れ味のよい文章だ。要点が簡潔にまとめられ、研ぎ澄まされた文章。読み進めるだけでスッと頭に入ってくる文章。そんな文章を書くヒントが、理科系の論文にあった。
『理科系の作文技術』は、木下是雄教授が若い研究者向けに書いた本。事実と意見を区別する、ぼかした表現を避ける、短い文章で構成する、能動態で書く、平仮名を混ぜて字面を白くする等々。豊富な例文と共に、作文と推敲のヒントが凝縮されている。
中でも腑に落ちたのが修飾語の話。修飾語は、位置が適切でなかったり二重になっていると分かりにくい文章になる。本書では悪い例文が上げられているが、著者が直すと途端に明快になった。理科系の本を読んでいると難解で理解できない事があるが、自分の能力を嘆く前に、文章の構成を疑う事も必要だ。
文章の明快さは構成にかかっている。書きながら何度も読み返し、単語を適切な順番に並べ替える。時には段落ごと入れ替えて読みやすい文章を目指す。「スッキリと筋の通ったものを書けるかどうかは、自分の書いたものをきびしく見直す能力と、何度でも書き直す根気とにかかっている」と著者は言う。
理科系の文章は感動を必要としていない。心情的な要素は徹底して排除する。だが、作文の基礎としては文系やブログにも役立つし、ビジネス文書ならど真ん中だ。本書は2012年の時点で72版。重版の数が価値を物語る。
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