本はすごい『昆虫はすごい』

20140915231230光分社の新刊『昆虫はすごい』を読んだ。著者は九州大学総合研究博物館の丸山博士。博士の専門は昆虫の多様性だが、本書では昆虫全般の生物学的な面白さを分かりやすく語ってくれる。

例えば、毒針の麻酔で獲物を長期保存するハチ、菌の畑を作って農業するキノコシロアリ、アブラムシを牧畜して甘露をすするアリ、糖を体内に蓄積して数年間休眠するネムリユスリカなど、昆虫の驚くべき生態が明らかになる。

また、中には人間の技術革新に関わる昆虫もいる。体内で化学物質を混合して100℃のオナラを出すミイデラゴミムシや、高いエネルギー効率で発光するホタルなど、昆虫の化学反応を工業製品に応用するための研究が進んでいる。

今日、息子のサッカーの試合を見るために小学校を訪れた。観戦中、自分の脚に登ってきたアリと、目の前を横切っていったチョウを見て、こんなことを考えた。

    アリとチョウの体は頭部・胸部・腹部の三つに分かれており、胸部に六本の足がある。分類上は節足動物門に属する生物で、通称は昆虫。頭部と腹部の防御物質を爆発させ、自らを犠牲にして組織を守るアリがいたり、交尾した後、雄が雌の生殖器に粘液で蓋をして、貞操を守ろうとするチョウもいる。人間と昆虫の違いはどこにあるのだろう。

普段は気にもとめないアリとチョウだが、本書を読んでいたからこそ、昆虫の定義と自爆テロと嫉妬心について想像した。本は世界との関わり方を変えることがある。昆虫もすごいが、本もすごい。

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