未来ある子供に読ませたい『とんでもなく役に立つ数学』

20150304204710タイトルは軽いが中身は濃い一冊。

とんでもなく役に立つ数学』は、東京大学の西成教授が高校生に講義した内容をまとめた本。ツールとしての数学の価値と、数学が好きになるための秘訣を丁寧に教えてくれる。

例えば微分方程式で振動を制御し、ベイズ推定で目撃証言の信憑性を計算する。幾何学で電子回路の最短経路を割り出し、セルオートマトンで渋滞のメカニズムを解析する。このような実例をもとに、数学と社会の関わり方を分かりやすく解説してくれる。

登場する数式は高校生レベルだが、数学を道具として利用する考え方は中学生でも理解できるはずだ。

教授は言う。

あなたが中学生なら、高校の参考書を眺めて下さい。高校生なら、図書館で大学の入門書を開いてみてください。(中略)毎日、ほんの30分でいいので、周囲に散らばっている知らない武器を身に着けることに時間を使ってください。これを習慣にしてしまうと、きっと将来、大きな見返りがあるでしょう。

数学が嫌いになるきっかけは、数式が理解できなかったり、暗記で対応できないところにある。他の科目は覚えるだけである程度対処できるが、数学は応用が必要になる。

例えば分数の足し算であれば、分母と分子を足すのではなく、分母は掛けて、分子はそれぞれの分母と分子を掛けて足すが、この計算式を単純に覚えるのではなく、理屈を知る必要があるのだ。

数学においては計算や記号も大事だけれど、記号に埋没しないで考え方を学ぶほうがもっと大事です。はじめに、まったく記号や公式を使わずに「なぜか?」を考えてごらん。その骨格になる部分を考えることが、論理と直感を養うことになるし、大きなイメージをつかむための力になるはずです。

表層にだまされず、定量的に分析して問題の核心をとらえる。そのためには数学の考え方が必要で、本書を読むとそれがよくわかる。子供が数学嫌いになる前に読ませたい一冊だ。

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