村上春樹の書籍が電子化『走ることについて語るときに僕の語ること』

20150828121219村上春樹のエッセイ『走ることについて語るときに僕の語ること』が電子化された。ウェブサイトの内容をまとめた『村上さんのところ』を別にすると、村上春樹の書籍が電子化されたのは初めてだ。

本書は村上春樹のマラソンに対する思いが綴られた本だが、同時に処女作『風の歌を聴け』を書いたきっかけや、長編小説を書く際の心構えなども語られている。

小説を書こうと思い立った日時はピンポイントで特定できる。1978年4月1日の午後一時半前後だ。その日、神宮球場の外野席で一人でビールを飲みながら野球を観戦していた。

ラソンについて語るときも、文体はいつもの調子だ。

筋肉は覚えの良い使役動物に似ている。注意深く段階的に負荷をかけていけば、筋肉はそれに耐えられるように自然に適応していく。「これだけの仕事をやってもらわなくては困るんだよ」と実例を示しながら繰り返して説得すれば、相手も「ようがす」とその要求に合わせて徐々に力をつけていく。

同じランナーとして共感できるところも多い。

一人きりになりたいという思いは、常に変わらず僕の中に存在した。だから一日に一時間ばかり走り、そこに自分だけの沈黙の時間を確保することは、僕の精神衛生にとって重要な意味を持つ作業になった。

村上春樹がここまで自分を吐露したエッセイは他に無い。各章には日付が記され写真も差し込まれている。まるで日記のようだ。独特のメタファーが織り交ぜられた中毒性の高い日記。

走ることについて語るときに僕の語ること Kindle / 楽天kobo