拗ねるカメラ

富士フィルムのX100Tはファインダーがハイブリッドになっている。ガラス越しに世界を見るOVFと、電子画面で世界を見るEVFが、レバーで切り替えられるようになっているのだ。詳しくはオフィシャルサイトの解説を。

私はとにかくOVFが気に入っている。素通しのガラス越しに世界を覗く臨場感は、EVFやミラーでは味わえない。写真を見る側はOVFとEVFのどちらで撮ったのか分からないと思うが、撮る側の感覚は写真に影響する。気持ち良さが写真に乗り移るはずなのだ。

また、X100TのOVFはガラスに電子情報がオーバーレイされ、絞り値やシャッタースピードが表示される。撮影エリアのフレームや被写体の拡大映像も表示されるのだが、これが攻殻機動隊の電脳世界のようで、オトコ心をくすぐる。

X100Tを購入して4ヶ月ほど経った。毎日のように持ち歩いていたので、かなり愛着が湧いた。だが、後継機のX100Fが発売されるため、手放すことに決めた。

すると別れを予感したのか、大縣神社で写真を撮っている最中に、X100Tの動きがおかしくなった。通常、OVFでシャッターボタンを押すと、直後にEVFへ切り替わる。だからファインダーを覗いたまま写真がチェックできるのだが、突然EVFに切り替わらなくなったのだ。

撮った写真を見せてくれない。カメラが拗ねたのだ。身近でもオーナーが変わった直後に不調を訴えたカメラを知っている。家電やガジェットもタイミングを図ったように壊れることがあるが、とりわけカメラはナイーブだ。

結局、X100Tは何度か電源を入れ直して元のさやに戻った。それから気まずい雰囲気になってしまったが、いつまでも別れを惜しんでいる訳にはいかない。次のカメラもまた、遅いよと拗ねているのだ。