誰が撮ったのか知りたくなる写真

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病院の待合室で何気なく雑誌を手に取った。タイトルは『泣ける日本の絶景88』。息子は表紙の富士山が気に入ったようだが、私は別の写真に心を奪われた。熊野の写真だ。

奥深い熊野の山々が、写真の向こうまで何層にも重なっていた。見えるのは頂の輪郭だけ。空色、群青色、藍色、紺色、蒼色など、幾つもの青色が頂を染め、恐ろしく綺麗なグラデーションを描いていた。

息子の名前が呼ばれたので、雑誌を置いて診察室に入った。帰る前にもう一度見るつもりだったが、思いのほか会計がスムーズに終わり、タイミングを逃してしまった。

こんなことは滅多にないが、誰が撮ったのか無性に気になった。一人で山に登ったのだろうか。機材は何を使ったのだろう。季節は? 時間は? ロケーションは?

書店で探した。2015年に発売されたムックだった。作者は宮地工さん。宮地さんは広告から雑誌まで幅広く活躍する写真家で、『泣ける日本の絶景88』の写真は全て宮地さんが撮ったものだった。

その日の夕方、風景が撮りたくなって夕焼けを撮影した。悪くない。悪くないが、作者が知りたくなるほどの写真ではない。山に登りたい。あの蒼いグラデーションを自分の眼で見てみたい。


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