写真の良し悪しを決める第一感

マルコム・グラッドウェルの『第1感』を読んだ。

人が何かを判断するとき、情報が多いと混乱することがある。贋作を一目で見抜く美術商。夫婦の短い会話で離婚を予言する心理学者。サーブの直前にダブルフォルトを予言するテニスコーチなど。特に専門家は、直感で判断するほうが正しい結果になることが多い。

写真の良し悪しを判断するときも、直感が物を言う。構図、明度、彩度、色相、解像度など。写真を構成する要素は様々だが、好みの写真か否かは一瞬で決まっているように思う。では、写真の中の何が一番重要な要素なのだろう。

『第1感』にこんなエピソードが登場する(簡潔にするために少し脚色してある)。

被験者に青いカードと赤いカードを順番にめくってもらう。裏に数字が書いてあり、合計数の多い色を勝ちとする。全部めくると青が勝って赤が負けるが、数字はランダムに書いてあるため、途中までどちらの色が勝つか分からない。

被験者の手には汗を検知するセンサーがついている。全てのカードをめくったあと、何枚目で勝ち負けを予想できたか聞くと、ほとんどの被験者は50枚目あたりと答えた。だが、汗のセンサーはもっと早く反応していた。10枚目ぐらいで既に、赤のカードでストレスを感じていたのだ。

写真を見るときも、理性より前に本能で直感している。

私の第一感は色にある。構図や解像度より前に、色相で良し悪しを判断している。判断に要する時間はコンマ数秒だ。その後に細部を見ても、最初の直感が覆ることはほとんどない。

『第1感』の本は、表紙の色に惹かれて手に取った。タイトルも魅力的だったが、表紙のオレンジが何よりも私の直感を刺激した。彫りの影、顔の色、筋肉の影。美術商も心理学者もテニスコーチも、突き詰めると色相で直感を働かせているのかもしれない。

ここからが興味深い。色は光の波長で変わる。目に見える可視光線は紫から赤まで。白と黒も波長の組み合わせで決まる。そしてカメラは光の波長を記録する装置。何かが繋がる。そんな予感がした。


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