世界の見方が変わる映画『この世界の片隅に』

観終わると恍惚とする映画がある。文字通り光に包まれたように放心するのだが、それも束の間、生きる糧を見つけたような気がして、次第に力が湧いてくる。『この世界の片隅に』はそんな映画だった。

この世界の片隅に』は2016年に公開された長編アニメーション。最初はミニシアターでの上映だったが、評判が評判を呼び、ついには『君の名は』を押さえて日本アカデミー賞を受賞した。

話題になっていた当時は、一見すると「まんが日本昔ばなし」のような作画だったので敬遠していたが、先日レンタルが開始されたので観たところ、端的に言って傑作だった。

物語の舞台は第二次世界大戦中の広島。広島市から呉市の家に嫁いだ主人公のすずは、もともと天真爛漫な性格だったが、時限爆弾で傷つき、広島に原爆が落とされてからは鬱になる。

食料の配給がなくなり、草を採って食べる。嫁いだ先の姉に文句を言われ、居場所をなくす。原爆で広島の実家を失い、天皇の敗戦宣言をラジオで聞く。この退廃した世界で、生きていく場所はあるのか。

不条理のどん底に落ちたすずだったが、それでも持ち前の明るさで生きる道を見つける。それは声を担当した「のん」の力も大きい。「のん」のあの柔らかい中にも芯のある声が、すずの性格を形作っていた。

この世界の片隅に』を観ると、世界の見方が変わる。日常の瑣末な悩みは本当にどうでもよくなり、力がみなぎってくる。ただ、翌日にはまたいつもの生活に戻る。戻るのだが、それでも心の片隅にずっと残る。そんな映画だ。


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