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大辞林がもたらす七つの利

iPhone


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起句でうたい起こし

2008年12月5日に発売されてからずっと欲しかったアプリ大辞林を、清水の舞台から飛び降りるつもりで購入した。私の小遣いは微々たるものなので「清水の舞台」という表現は決して大袈裟なものではない。同じように2500円という価格から購入に踏み切れない方も多いのではないか。

清水寺といえば、参道の入口に「経書堂」という御堂がある事をご存知だろうか。男女が手頃な小石を集め、法華経などの一字を書いて諸霊を弔った風習が由来とされている経書堂。そして一字違いの「物書堂」。物書堂は廣瀬さんが代表を務める大辞林の開発元だ。

承句でこれを承うけ

廣瀬さんは1996年にエルゴソフトに入社し、Macのエディタ「EGWORD」の開発に携わっていたそうだ。1996年といえば私がAppleのPerformaを購入した時期で、物書きになりたいと思っていた時期でもある。EGWORDというエディタの存在は知らなかった。あの頃使っていたとしても良い文章は書けなかっただろう。手段が目的と化していた時期だったからだ。

廣瀬さんは2008年にエルゴソフトを退社し、独立して物書堂を起した。大辞林の他にも「ウィズダム英和・和英辞典」や「模範六法」など、多くの実用系アプリを開発している。実際に会った事はないが、とても凛々しい方だ。コートに身を包んでカメラのファインダーを覗く姿は哀愁が漂う。廣瀬さんや物書堂から京都の雰囲気を感じるのは偶然だろうか。

転句で趣を転じ

大辞林を購入するまではYahoo辞書にお世話になっていた。癖のある無料の辞書アプリよりは、Safariで使うシンプルなYahoo辞書のほうが使い勝手が良かった。Yahoo辞書が公式にiPhoneへ最適化する前にも、「踊る犬.net」というデベロッパーが最適化した同辞書をSafariで利用していた。

「踊る犬.net」のサイトはぜひ見て欲しい。躍動と郷愁が同居したような絵を描くイラストレーターであり、iPhoneで最も使いやすいTwitterのWebアプリ「pichu*pichu」を作ったデベロッパーでもある。Noradaikoさんが1人で活動しているのかは分からない。謎の多いデベロッパーだ。

結句で結ぶ

「大辞林がもたらす七つの利」について解説したい。

一. 速度
「利(り)」という言葉を調べ終わるまでの時間をSafariのYahoo辞書と比較した。Yahoo辞書が30秒かかったのに対し、大辞林はたったの10秒。ネットへ接続する必要のないローカルな辞書が、こんなにも快適だとは知らなかった。同じく速さが魅力の「WriteRoom(App Store)」を使えば、iPhoneがシングルタスクである事を忘れるぐらいだ。(右はWriteRoomの画像)

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ニ. 索引
大辞林の「インデックス」は広大な言葉の海。全ての言葉を表示させると、マトリックスのような四角い枠が展開され、どこまでも続く海を連想させる。端から端までの距離は長いが、スクロールが滑らかなので、快適な言葉の旅を楽しむ事ができる。また「インデックス」にはレジューム機能がある。前回終了時の状態を記憶しているため、一旦旅を終えても、またそこから再開できるのだ。

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三. 連鎖
例えばインデックスで1つの言葉を選ぶ。解説が表示される。解説の中の気になる単語を指でそっとなぞる。するとその言葉の解説へジャンプする事ができる。同じ手順で単語をなぞった後、手を離さずにそのままにしておくとクリップボードにコピーする事もできる。青文字の単語はタッチするだけでジャンプする事が可能だ。

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四. 意外
驚く事に「orz」というネット用語が収録されていた。また、最近まで知らなかった「バイオコンピュータ」や「性淘汰」という用語も載っていた。初めて見る言葉はまずは大辞林で調べればいい。

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五. 同異
例えば「はかる」や「みる」という動詞。これらは対象によって「計る・測る・量る」、「観る・診る・看る」という漢字を使い分ける必要がある。これをYahoo辞書で調べても用例が出てくるだけだが、大辞林には詳細な解説が載っている。

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六. 後方

言葉の最後は分かっているのに、出だしが分からない事がある。そんな時は大辞林の後方検索で調べればいい。下の画像は後方一致検索を使って、Noradaikoさんの「踊る犬.net」に引っ掛けた単語を探したものだ。

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七. 独言
大辞林にはTwitter投稿機能がある。単語だけにするか、解説文も挿入するか選択する事も可能だ。投稿時の動作も安定している。「#daijirin」というハッシュタグも自動で付くので、Twitterユーザーは機会があったらタグを検索してみて欲しい。

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是れ則ち絶句

私はまだ使った事がない機能だが、青空文庫リーダの「豊平文庫(App Store)」や「i文庫(App Store)」は、小説の中の用語を大辞林で調べる事ができる。語句を選択する事で大辞林が起動するらしい。この機能がSafariやTwitterで使えたらどんなに便利だろうか。Safariで使えるようにするにはリダイレクトを実装する必要があるので、実現は難しいかもしれないが。

大辞林には少し要望もある。簡単なメモ帳の機能があると嬉しい。複数の単語の意味をコピーする時に使えるし、ヒラギノ明朝体を使って文章を書くのも楽しいかもしれない。また、前方・後方・完全検索の他にも「あいまい検索」ができたり、「ウィズダム英和・和英辞典(App Store)」など他辞書との横断検索ができても面白いだろう。

今回の記事は久しぶりにiPhoneのWriteRoomで書いた。今では大辞林とWriteRoomがDockに隣り合わせで並んでいる。iPad登場で少々冷めた感のあったiPhoneだが、大辞林のおかげで活気を取り戻したようだ。

大辞林(App Store 2500円)


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