Book-ノンフィクション
マルコム・グラッドウェルの『第1感』を読んだ。人が何かを判断するとき、情報が多いと混乱することがある。贋作を一目で見抜く美術商。夫婦の短い会話で離婚を予言する心理学者。サーブの直前にダブルフォルトを予言するテニスコーチなど。特に専門家は、直…
家で偶然、映画の割引券を見つけた。1800円が1000円になる割引券で、これはお得だということで『虐殺器官』を観に行った。その日は家族が車を使っていたので、私は独りで自転車で出かけた。映画が終わると陽が落ちていて、風が冷たく突き刺さった。家に帰る…
いつからか、コンビニのレジでポイントカードの有無を聞かれるようになった。セブンイレブンは独自のカードを使っているが、ローソンはPontaカード、ファミリーマートはTカード、サークルKサンクスはRポイントカードを採用し、いずれも異業種の共通ポイント…
村上春樹のエッセイ『走ることについて語るときに僕の語ること』が電子化された。ウェブサイトの内容をまとめた『村上さんのところ』を別にすると、村上春樹の書籍が電子化されたのは初めてだ。本書は村上春樹のマラソンに対する思いが綴られた本だが、同時…
2005年6月、膵臓癌の手術を終えたスティーブ・ジョブズは、スタフォード大学の卒業スピーチでこのような名言を残した。私は17の時、こんなような言葉をどこかで読みました。確かこうです。「来る日も来る日もこれが人生最後の日と思って生きるとしよう。そう…
理性を伴わない想像力はただの空想だが、想像力を伴わない理性は無味乾燥である。こんな書き出して始まる『100の思考実験』は、私たちの想像力を試す。著者はイギリスの哲学者ジュリアン・バジーニ。ウィトゲンシュタインの言語論から映画マトリックスのワン…
私がいつも部下に教えているのは、自分で考えることの大切さだ。目の前で起きた問題に対して表面的な事象にとらわれず、深く追求して真実を解き明かす。物事に対して常に疑問を持つ。そんな想いが伝わった人はいい仕事をしてくれるし、伝わらない人はロボッ…
書評集の傑作『打ちのめされるようなすごい本』が電子書籍で登場した。著者の米原万里はゴルバチョフやエリツィンが指名したほどのロシア語通訳者。通訳者と同時に作家でもあり書評家でもあった。軽やかな文体と絶妙な皮肉。機知に富む表現と圧倒的な知性。…
先日、国土交通相はリニア中央新幹線の工事計画を認可した。JR東海は来年から着工し、2027年の開通を目指す。完成すれば東京-名古屋間を40分で結ぶ夢の超特急となるが、『リニア新幹線 巨大プロジェクトの真実』はその夢を完全に打ち砕く。環境面では、電磁…
明快な文章とは切れ味のよい文章だ。要点が簡潔にまとめられ、研ぎ澄まされた文章。読み進めるだけでスッと頭に入ってくる文章。そんな文章を書くヒントが、理科系の論文にあった。『理科系の作文技術』は、木下是雄教授が若い研究者向けに書いた本。事実と…
私は1970年代生まれなので、昭和天皇の記憶はおぼろげながら残っている。といっても若々しく活動する姿ではなく、年号が変わる直前のご老体の印象だ。そんな天皇が44歳の時、つまり1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、第二次世界大戦に終止符を打っ…
Official Site自身の女性器を3Dデータで配布し、わいせつ物頒布の容疑で作者が逮捕される事件があった。本人はあくまでアートだと主張しており、メディアは「わいせつ」と「芸術」の対比を軸に報じていたが、あれは単なる三面記事的なネタではなく、何かを象…
台湾・朝鮮・満州は憎むべき日本の三大植民地と言われているが、植民地は本当に悪だったのだろうか。日本の軍隊は本当に婦女暴行や虐殺を行ったのだろうか。そんな疑問を元に大日本帝国を再評価したのが、黄文雄による『日本の植民地の真実』だ。台湾・朝鮮…
「ついに冬になった」という文は違和感がある。なぜなら「ついに」という副詞は、時間が経過した後に必ず成立する事に対してはあまり使わないからだ。この場合は「やっと」のほうが正しい。言葉は直感で選ぶ事が多いが、違いを理解し意識的に選べるようにな…
2013年12月に日本の和食が世界無形文化遺産に登録された。料理そのものに必要以上に手を加えず、素材を大切にする和食。東京オリンピックの招致と同様に、もてなす心をアピールしての登録だった。和食といえば鮨、味噌汁、天ぷら、蕎麦などが思い浮かぶが、…
私たちは世界共通語として英語を学ぶよう教育されているが、その方針は正しいのだろうか。確かに英語を母国語とする人口は中国語の次に多いため、共通語として相応しいのかもしれない。だが、言語学的に見て英語は理解しやすく、合理的な言葉なのだろうか。…
NHK出版の新刊『ルポ 電王戦』は、コンピュータ将棋の歴史と人間との対決を熱く語った新書。著者はコンピュータとプロ棋士の対決を初めて提案した将棋観戦記者。2007年に行われたそのBonanzaー渡辺戦が実現したからこそ、コンピュータ対プロ棋士の電王戦が毎…
レゴには不思議な魅力がある。子供にとっては組み立てる楽しさがあり、大人にとってはオブジェとしての価値がある。大人にとっても創造する楽しさがあり、完成された製品ではなく、自由にアレンジできるところに最大の魅力がある。そんなレゴのブランド力は…
私はマインドマップが苦手だ。吹き出しや矢印が四方八方に配置されていると、どこから見ればよいのか分からず混乱する。要素の繋がりがはっきりせず、言いたいことが頭に入ってこない。マインドマップを見るのが苦手だから作るのも苦手で、本の目次のように1…
10年程前にEdyが登場した時、私は懐疑的だった。わざわざ現金を電子マネーに交換して買い物をするメリットはあるのか。チャージだけして利用しないと、運営会社は儲かるが消費者は損をするのではないか。そう思っていたのだが、実際には交通系マネーと共に広…
写真は一瞬で時代を切り取る。1961年にピュリツァー賞を受賞した写真「舞台上での暗殺」 は、社会党書記長の浅沼稲次郎が日本刀で刺殺される瞬間が収められた。1991年の「南アフリカの抗争」では人が炎に包まれる瞬間が収められ、2002年の「世界貿易センター…
家を建てるのは一生に一度あるかないかのイベントだ。外観、日照、内装、間取り、環境、価格、様々な条件に折り合いをつけながら、最後にこれだと決める。私が購入したのは建売りだったが、それでも要望は沢山あった。東京大学の松原隆一郎教授は、1万冊の蔵…
私は仕事柄、人が書いた文章を添削する機会が多いが、読んでいて一番気になるのは言葉の選び方だ。例えば「ことがある」と書くべきところで「ときがある」と書いていたり、「中央」と書くべきところで「真ん中」と書いていたり。選ぶべき単語は前後の文脈と…
ライト兄弟が長時間飛行に成功!という記事を新聞で読み、二宮忠八は製作中の飛行機を自ら破壊した。世界初の飛行機を作る夢が、文字通り木っ端微塵に砕かれた。20世紀初頭はアメリカや日本だけでなく、ドイツ、イギリス、フランスなど、世界で同時多発的に…
私はどちらかといえば、モロに見えるよりパンチラのほうが好きだ。パンチラは想像力を喚起する。見てしまった自分と見られてしまった相手との間で、自分勝手で楽しい物語が始まる。だが、実際にストーリーが進んで隠れていた部分が見えてしまうと、映画のエ…
amira_a via photopin cc古代ギリシャから現代まで、偉大な巨人たちが様々な本を書いてきた。哲学、科学、数学など、あらゆる分野で真理は既に存在する。研究者たちは、既存の理論を知らずに主張すると批判される。それは誰々が既に書いている、そんな事も知…
via photopin cc 遠藤にしても、「もっと激しくプレーしろ」とか「もっとシュートを打て」と言われたことはあったはずだ。それでも遠藤は決して変わらなかった。自分のことは自分が一番よくわかっていると言わんばかりに、やり方を曲げなかった。 ブームを追…
LetTheCardsFall via photopin cc すべての人間は、ゆりかごから墓場まで、なんらかの身体的特徴を携えてゆくものだ。生涯変わることのないその特徴によって、個人は常に認証され、そこに疑問の入りこむ余地はまったくない…… その署名を構成するものこそは、…
「人は生まれながらにして知ることを欲している」 アリストテレス - 形而上学 人生には限りがある。人は一生のうちで何冊の本を読めるのだろう。普通は仕事や家事や情事があるので、読書に割ける時間はあまりない。だからこそ、できるだけ良い本を選んで効率…
アフガン戦争の犠牲者たち by パウラ・ブロンスタイン ウサマ・ビンラディンの殺害から3年近く経ち、ようやく米軍は2014年にアフガニスタンから撤退する。2001年から始まったアフガニスタン戦争の死者は3万人を超えた。なぜアメリカはここまでして他国に干渉…