飛行機の開発秘話として読むか、メカニズムを知る教科書として読むか『飛行機物語』
ライト兄弟が長時間飛行に成功!という記事を新聞で読み、二宮忠八は製作中の飛行機を自ら破壊した。世界初の飛行機を作る夢が、文字通り木っ端微塵に砕かれた。20世紀初頭はアメリカや日本だけでなく、ドイツ、イギリス、フランスなど、世界で同時多発的に飛行機の開発が進んだ時代だった。
科学や工学のパラダイムシフトが、突発的に起こる事はあまりない。世界を変えた方程式も、その背景を紐解くと、発見されるべきタイミングで発見されている事が分かる。世界各国で開発が競われた飛行機も同様だが、ターニングポイントはやはり、ライト兄弟によるエンジン飛行機の初飛行だろう。
鈴木真二教授による『飛行機物語』は、飛行機の歴史と原理を紐解く一冊。揚力と推力のメカニズム、エンジンと機体の開発経緯、関わる人物の情動。これらが豊富な挿絵と写真と共に、見事に新書一冊でまとめられている。
目次はこちら。
1. 揚力はなぜ発生するのか
2. リリエンタールからライト兄弟へ
3. エンジンはどのように開発されたか
4. プロペラはなぜ推力を発生するのか
5. 翼理論が誕生するまで
6. 金属の機体が誕生するまで
7. ジェット・エンジンが誕生するまで
8. ジェット旅客機が開発されるまで
私が読んだのは中公新書の『飛行機物語』。内容が同じ文庫版もある。新書は縦書き、文庫は横書きとの事。なるほど、確かに本書には物語的な側面と教科書的な側面がある。
人物や開発の経緯は物語として読むと面白いし、揚力や推力のメカニズムは教科書として読むと面白い。ベルヌーイやナヴィエ=ストークスの方程式も登場するので、横書きのメリットはある。
物語として読むか教科書として読むか。いずれにせよ名著である事は間違いない。
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