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心に残る文章を書くための修辞技法

Essay

20111222221707

心に残る文章が書きたい。感動が伝わる文章。数年後に読んでも違和感のない文章。

楽しい、美しい、嬉しい。形容詞は素直に思いを伝える事ができるが、時間が経つと色あせる。

心は変化するからだ。


2011年に書いた記事を振り返りながら、修辞技法の効果について説明したい。

列叙法・史的現在

列叙法

    ある特定の対象に対して、関連性のある単語や文章を、立て続けに並べて強調する手法。

史的現在

    過去の出来事を、今行われているかのように書き表す手法。

渋谷で発生した人身事故の影響で、代々木のホームから電車が発車しなかった。ドアが開いてるせいで、車内の冷気が外へ逃げ、空調がごうごうと音を立てる。目の前に座っている女の子たちは、お菓子を食べながら延々と他愛もない会話をしている。首筋から汗が流れ、いよいよ諦めて車内から出ようとした矢先、運転再開のアナウンスが流れた。意気揚々とした声だった。
原宿の喧騒とAppBankStore


車内の状況を連続して描写する事で、運転再開時の安堵感を強調しようとした。また、「音を立てる」「会話をしている」という現在形を使う事により、過去の出来事に臨場感を出そうとした。

隠喩法

隠喩法

    比喩であることが明示されていない比喩。

冒頭の写真はボリビア・ウユニ湖のものだ。サルバドール・ダリが「記憶の固執」を描く時にモチーフとした土地らしい。ダリは閃きにより時計を歪ませ、@ytkaは時間の向きを変えてしまった。
あなたを過去へと誘う魔法のアプリ "SLOW Mirror"


「まるで〜のようだ」という直喩を使わず、記事全体を通して「ダリ」と「アプリ作者」を並べて書き、アプリ作者の非凡な才能を伝えようとした。

体言止め・頓降法

体言止め

    体言(名詞・名詞句)で文章を終えること。言い切らずに、文の語尾に付ける終止形を省き、体言で止めて、強調させたり余韻を残すこと。

頓降法

    肯定的な文面を列挙しておいて、最後に落ちとなる言葉を入れることで、全体を否定したり、滑稽な様子を表現する方法。

Twitterで見かけるハミ出した顔文字の正体(タイトル)
Twitterで変な顔文字を募集したところ、多くの方が呼びかけに応えてくれた。だが、集まりすぎて気持ち悪くなった。(本文)
Twitterで見かけるハミ出した顔文字の正体


タイトルを「正体」という名詞で体言止めする事により、得体の知れないものを強調しようとした。また、「気持ち悪くなった」という落ちをつけることにより、記事の雰囲気を軽くした。

擬人法

擬人法

    人でないものを人格化し、人に例える手法。

iPhoneのタブーに挑んだ天気アプリ "Celsius"(タイトル)
唯一変化を許されているのがカレンダーで、他のアプリは皆、ダルマが転ばない限り動かない。(本文)
iPhoneのタブーに挑んだ天気アプリ "Celsius"


人ではなく物がタブーに挑むと表現する事により、アプリの斬新さを伝えようとした。また、「ダルマさんが転んだ」で動くのは人だが、ここではアプリを擬人化して、アイコンが変化しない事を強調しようとした。

省略法

省略法

    文章や会話の一部を省略して余韻を残し、読者に続きを連想させる技法。

博士の愛したオイラーの公式など。文系の私にとっては目の覚めるような発見ばかりだった。もし中学生や高校生の頃、この映画に出会っていたら、私は数学の道へと進んでいたかもしれない。
TED+SUBという素晴らしいアプリがiPhoneに対応した。TEDとはTechnology Entertainment Designの略だ。
博士の愛した数式とTED


「博士の愛した数式」から、説明を入れずに「TED+SUB」の話へ移した。前者の余韻を残す事で、無関係な前者と後者の関係性を強調しようとした。

列挙法・倒置法

列挙法

    ある特定の対象に対して、関連性のある単語、あるいは文章を立て続けに並べて強調する手法。
倒置法
    主語−目的語−述語の順序を倒置(逆転)させ、目的語を強調する手法。

翌々年、Macへの興味も薄れ、突然哲学に目覚める。一年間、図書館に籠もり本を読みあさった。フーコー、ドゥルーズ・ガタリ、浅田彰、柄谷行人。専攻の米文学に興味がなくなり、大学にはほとんど行かず、当然のように留年した。
村上春樹の書斎とスティーブ・ジョブズ


「読みあさった」という述語と、「フーコー、ドゥルーズ・ガタリ、浅田彰、柄谷行人」という目的語を逆転させた。さらに、複数の著者を並べる事により哲学への興味を強調した。

最後に

今年書いた文章の中から心に残っているものを選んだら、修辞技法を使った記事ばかりになった。

感情を形容詞で表すのではなく、客観的な描写やレトリックで表現すると色褪せない文章になる。名詞は普遍的だからだ。

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読みやすい文章を書くための技法

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