あなたを突き動かすもの『意識は傍観者である』

20150430133418本を読んでゾクゾクしたのは久しぶりだ。

『意識は傍観者である』は神経科学者のデイヴィッド・イーグルマンによる脳科学の本。人は目や耳で情報をインプットして、口や手でアウトプットする。この一連の流れを自分でコントロールしていると錯覚するが、大部分は無意識に行われている。多くの場面で意識は傍観者なのだ。

目を閉じて、車の車線変更を想像して欲しい。あなたはハンドルを握っている。左の車線から右の車線に移るためにハンドルを右に回す。右の車線に移ったらハンドルを正面の位置に戻す。多くの人がこのようなハンドル操作を想像するが、実際はハンドルを左に回してから正面に戻さないと、右側の中央分離帯に追突してしまう。

人は大部分を意識せずに処理している。だからこそ、脳のエネルギー使用率を最小限に抑えることができる。人の脳の重さは体重の2%に満たないが、消費するエネルギーは全体の20%を超える。私たちはバッテリーで動く生物なのだ。脳を効率よく使わないと、モバイル端末のように充電切れを起こしてしまう。

脳は犯罪とも関わっている。脳に腫瘍があったり前頭葉が損傷していると、自分ではコントロールできない行動を起こすことがある。愛する家族を傷つけたり、無差別に人を殺害することがある。自分には選択の余地のない行動に対して、人はどこまで責任を追うべきなのだろう。

著者は本書で「あなたが」「あなたが」と頻繁に語りかけてくる。エッジの効いた文体で盲点を鋭く突いてくる。その度に私たちは脳の中を刺激されゾクゾクする。このゾクゾクする感覚こそ、意識では制御できない反応だ。

もしあなたが宇宙科学に興味をそそられるなら、脳科学で起きていることに心の準備をしてほしい。自分は自分の中心にいるという思い込みが打ち砕かれ、もっとはるかに壮大な宇宙がはっきり見えるようになりつつある。この本で私たちはその内面の宇宙へと向かい、異星の生命体を調べるのだ。

あなたを突き動かしているものは何か。本書を読むと意識への意識が変わる。

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