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豊かな時間

Essay

20150531144036先月から家でトイプードルを飼い始めた。まだ子犬で、ウン○コやオシッコは床にするし、甘噛みは甘えを通り越して痛いし、何かと世話がやけるのだが、そんな煩わしさを忘れるぐらい愛くるしくて、ついつい可愛いいでちゅねーとバブちゃん語を使ってしまい、家族から白い目で見られている。

最近ようやく「待て」を覚えた。オヤツのボーロを前に置いて「マテ」と声をかけると、匍匐前進のような姿勢をして上目づかいで見つめてくる。それは「フセ」だろうと心の中で突っ込みつつ、可愛らしい目を見つめているとまたバブちゃん語で声をかけそうになり、ぐっとこらえている。

それにしても犬は何を考えて生きているのだろう。

動物の言い分 人間の言い分』は、日高敏隆教授による動物行動学の本。登場する動物は犬、ネコ、ヘビ、カエル、ヒラメ、カレイ、ペンギン、クジラ、アザラシ、モモンガ、コウモリ、チョウ、マグロなどなど。動物行動学といっても堅苦しさはなく、動物の行動原理や形態の由来を面白おかしく教えてくれる。

日高教授には、何でもないような日常の中に楽しさを見つける特技があるようで、文章の雰囲気が中島らものエッセイに似ている。中島らもは酒と薬をベースにして仕事をしていたが、それがカエルやマグロになったような感じだ。

『動物の言い分 人間の言い分』を読んで一番感じるのは、日高教授の豊かさだ。

動物をじっくり観察して疑問に思ったことをコツコツ調べる。調べて判明した事実に楽しいエピソードを混ぜて文章にする。仕事で怒鳴ったり怒鳴られたり、家で子供にイライラしたり八つ当たりをしたり、そんな殺伐とした空気とは別の次元を感じる。

そういえば、ゾウとネズミの平均寿命は70年も違うのに、死ぬまでに心臓が鼓動する回数はどちらも同じだそうだ。ゆったり動くゾウと、せかせか動くネズミ。一見するとネズミの生活はせわしないが、生体的な密度はゾウと同じで、それなりに充実した一生を送っているのかもしれない。

人間も、個人の一生の時間はバラバラだが、種として見れば死ぬまでの心臓の鼓動回数は誰でも同じ。違うのは、時間に対する豊かさだ。誰もが教授になって研究したり、起業して社長になったりする必要はない。今している仕事でも、考え方次第で豊かさは増す。

仕事以外でも同じ。本を読んでもいい、映画を観てもいい、Twitterをしてもいい。旅行に行ってもいい、子供と遊んでもいい、犬のしつけをしてもいい。とにかく、自分で豊かだと感じる時間をできるだけ多く過ごしたいものだ。

ところでうちの犬は、いつトイレの場所を覚えてくれるのだろう。ゲージから出す度に気になってしまうし、失敗する度に床を拭いているのでトイレットペーパーの減りが異常に早い。目下のところ、それが一番の問題だ。

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