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ペプシネックスゼロ

Essay

人は様々なものを失いながら生きている。子供の頃はオモチャを失くして泣き、学生の頃は彼女にふられて泣き、大人になったら若さを失って嘆く。だが、人は失うものがあるからこそ得るものがある。新しいオモチャ、新しい彼女、そして大人の楽しみ。人生はそのように、自然とバランスをとっているものなのだ。たぶん。

最初にペプシネックスゼロを飲んだのはいつだったか。発売されたのが2012年3月なのでその後なのだろう。飲んだ理由はなんとなく覚えている。テレビで放映していたコマーシャルがエロチックだったのだ。全盛期の沢尻エリカや香里奈が、過激なポーズと挑発的なセリフで誘ってきた。たしか。

私にとってコーラといえばコカコーラの一択で、ペプシは選択肢になかった。ペプシは薬の味がして嫌だったのだ。だが、ペプシネックスゼロは私の固定観念を変えた。薬のような臭いは消えていて、炭酸が喉を強く刺激して美味しかった。グビグビグビ、プハー。風呂上がりやランニングの後に飲むと爽快感があって最高だった。

値段も手頃だった。近所のドラッグストアでは1.5リットルのボトルが100円ちょっとで売っていた。炭酸がキツいので、キャップを開けても翌日まで爽快感が残っていた。人口甘味料は身体によくないかもと思いつつ、毎日のようにペプシネックスゼロを飲むようになった。

だが、私とペプシネックスゼロの関係は突然終わる。人が何かを失うときはだいたい唐突だ。自分の知らないところで着々と準備が進み、突然降りかかってくる。彼女から振られたり、勤めていた会社が倒産したり、交通事故にあったりと、不幸は急に襲ってくる。突然なのは自分にとってだけなのだが。

先月の半ば頃、ペプシストロングゼロのCMが始まった。日本でしか販売していないことを嘆いて子供が泣くCMだ。炭酸が強くなったとアピールしていたので、近所のドラッグストアで買って飲んでみた。だが、味がダメだった。想像していたような炭酸の強さもないし、味も薄くてコクがない。私にはペプシネックスゼロが合っている。そう結論付けてドラッグストアに買いにいった。

だが、どこをどう探してもペプシネックスゼロがない。棚に並んでいるのはストロングだけだ。これは発売当初だけのメーカー戦略なのだろう。それならしょうがない。今日のところはストロングを買おう。ついでにレジの綺麗なお姉さんにネックスの入荷日を聞いてみたが、知らないとのことだった。

その後に何度かドラッグストアに行ったが、やはりネックスがない。コンビニもストロングしか売っていない。いよいよ心配になってウェブで調べたところ、驚愕の事実が判明した。ストロングはネックスの後継で、ネックスの販売は終了したそうだ。

ウェブでもネックスの販売終了を嘆く声はない。私の味覚がおかしいのかもしれない。だが、どうみてもストロングはコクがない。カフェインが強くなったそうたが、私の脳はそれを体感できるほど敏感にはできていない。メーカーは不幸の斧を着々と準備し、突然私に振り下ろした。

人生は時に残酷だ。私はペプシネックスゼロを失った。次に得るものなんてあるのだろうか。


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