人間とコンピュータの将棋対決が熱い『ルポ 電王戦』

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NHK出版の新刊『ルポ 電王戦』は、コンピュータ将棋の歴史と人間との対決を熱く語った新書。著者はコンピュータとプロ棋士の対決を初めて提案した将棋観戦記者。2007年に行われたそのBonanzaー渡辺戦が実現したからこそ、コンピュータ対プロ棋士の電王戦が毎年開催される事になった。

コンピュータ将棋の面白いところは、ソフトの開発者が初心者クラスでも、読みを速くして学習能力を高めることで、プロ棋士に勝つところにある。世界で初めて指し将棋のソフトが登場したのは1974年。そこからプログラマが改良を重ね、2005年にBonanzaが「読み」のための全幅検索と、「大局観」のための学習機能を取り入れ、コンピュータ将棋は転機を迎えた。格段に強くなったのだ。

歴史上、プロ棋士が初めてコンピュータに負けたのは2013年の第2回電王戦。棋士は佐藤慎一、ソフトはponanza。佐藤は負けた瞬間、震えた。解説の山口恵梨子棋譜を振り返りながら涙を流した。ponanzaの開発者である山本は記者会見でこう述べた。

この国の情報科学としては偉大は一歩だと思っています。

2014年の第3回電王戦では、デンソーが開発した「電王手くん」がコンピュータ側の代指しを務めた。ドワンゴ主催のためニコニコ動画でも放送され、ソフト側はあのやねうら王も登場した。結果はプロ棋士の4敗1勝。渡辺は「将棋連盟始まって以来のピンチだと思います」と率直な可能を述べている。



こうなると、タイトルホルダーの羽生、渡辺、森内との対戦に期待が高まる。実現するとしたら2015年の電王戦。人間には感情の浮き沈みがあるがコンピュータにはない。どんな不利な局面でも黙々と最善の手を計算する。羽生名人の負け演技も通用しないだろう。

ソフトの真価は、悪手を指した後に発揮される。人間ならば自分が悪手を指したことで動揺し、さらに悪手を重ねてしまうのが常である。(中略)一方で感情なきソフトは、自分が悪くなっても動揺することなく、局面を線ではなく点でとらえ、常にその場の最善手を探ろうとするのである。

コンピュータ将棋のことはあまり知らなかったが、俄然興味が湧いてきた。2015年の電王戦はぜひライブで観たい。『ルポ 電王戦』を読んでいたら、子供の頃テレビから聞こえてきた女性の声を思い出した。10秒〜 20秒〜 先手2三歩成る。あの艶かしい声だ。女流棋士には萌え系も多い。

久しぶりに将棋が指したくなった。

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