Google Glass 殺人事件



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2014年、ネットの大手企業Google社がメガネに装着するウェアラブルカメラを発売すると、世界中で瞬く間に普及した。2007年にiPhoneが登場して以降、スマートフォンを手に持つ人たちで街の風景が変わったように、今では多くの人がGoogle Glassを付けて歩いている。

2014年4月28日午後2時、ネットの掲示板サイトで殺人事件がライブ中継された。被害者を刺すところがGoogle Glassで撮影されたのだ。被害者の顔は映っていなかったが、警察は掲示板に投稿された名前から身元を割り出し、札幌のアパートで遺体を発見した。

真っ先に犯人として疑われたのは、Google Glassの所有者だった。Google GlassGoogleのアカウントと紐付いており、映像をアップロードするとアカウント情報が残るので、警察もすぐに容疑者を見つける事ができた。だが、容疑者は犯行を否認した。犯行が行われた時刻、容疑者は博多に居たというのだ。

警察が確認すると、犯行時刻の1時間ほど前に、福岡空港の防犯カメラに容疑者の姿が映っていた。福岡空港から新千歳空港までは約3時間。さらに空港から札幌のアパートまで1時間かかるので、アリバイは成立する。結局、容疑者は証拠不十分で釈放されたが、警察署から出てくる時、容疑者は口元を緩めてニヤついていたそうだ。

容疑者が使ったトリックはこうだ。

犯行当日午前8時、容疑者は札幌のアパートで被害者を刺して殺害。エアコンで部屋を最低温度まで下げ、自動で電源がオフになるようにタイマーをセットした。遺体の体温を下げることで、死亡推定時刻を遅らせた。

容疑者は被害者を殺害した後、飛行機で博多まで移動。午後2時、被害者のアパートと同じような内装の部屋で、Google Glassを付けて浮浪者を殺害した。ライブ中継された映像は暗く、浮浪者は被害者と同じ服を着せられていたので、見分けがつかなかった。数日後、浮浪者の死体が川で発見されたが、顔が潰されていて身元は割り出せなかった。

Google Glassは、発売前から運転中の利用が規制されたり、飲食店での装着が禁止されるなど、大きな社会的反響を呼んでいた。今回の殺人事件がきっかけで、倫理的な議論がますます活発になったが、皮肉な事に、テレビやネットに登場すればするほど販売台数は増えていった。


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