それでもW杯で日本代表に期待する

 ワールドカップの初戦が迫ってきた。日本は6月19日のコロンビア戦を皮切りに、25日にセネガル、28日にポーランドと対戦する。直前に監督が解任され、不安定なまま本戦に臨む日本。私の脳裏には既に、地味な失点を続けて全敗するイメージが浮かんでいる。

 ただ、それでも日本代表には期待してしまう。W杯が4年に一度しかない大会だからかもしれないし、日本がチャレンジャーの立場だからかもしれない。様々な要因があるが、最も大きいのは、小学校のスポーツ少年団でサッカーを教えてくれた宮地にいちゃん(みやち兄ちゃん)の影響だ。

 1986年、マラドーナが伝説の5人抜きをした大会。宮地にいちゃんの狭い部屋に少年団が集まり、すし詰めになって観戦した。一番興奮していたのは宮地にいちゃんだ。テレビの実況に合わせて、マラドーナマラドーナ、、、マラドーナ?! マラドーナ!!!! マラドーーーナーーーーーー!と一人で叫んでいた。

 これで、私にとってW杯は特別な祭典として刷り込まれた。宮地にいちゃんの楽しそうな姿を今でも鮮明に覚えている。子供にとって、楽しむ大人と一緒にいる体験は、海馬の奥に残るのだろう。私もあと少し勇気を出せば、そんな体験を与えられる仕事ができるかもしれない。

 W杯のゴールから得られる高揚感と万能感は、何ものにも代えがたい。恋愛映画を見たからといって恋人ができるわけではないように、日本が勝利したからといって自分が変わるわけではない。だが、それでもW杯の勝利は、自分の背中を押してくれる気がするのだ。