テクストへの想い

どのようなテクストもさまざまな引用のモザイクとして形成され、テクストはすべて、もうひとつの別なテクストの吸収と変形にほかならない。
ジュリア・クリステヴァ


 学生時代、図書館に篭り、本を読みあさっていた時期があった。柄谷行人浅田彰ジャック・デリダドゥルーズガタリフーコーといった人たちの本で、一般的には哲学者と呼ばれている人たちだ。そこで「テクスト、ディコンストラクション構造主義リゾーム、スキゾ、引用」といったキーワードに出会った。今も昔も、それらの意味はほとんど理解できていないが、今にして思えば、私の言葉はその時に形成されたのだと思う。

 今回は、私がiPhoneで何をしたいのか話したい。興味がなくても、とりあえずはInstapaperなりEvernoteなりに放り込んで頂けるとうれしい。そしていつか、「引用」というキーワードについて思い出す事があったら、それらのツールで検索をかけてみて欲しい。

 冒頭の引用が全てを物語っている。

 あなたの、そして私の記事に、オリジナルな要素がどれだけあるのか考えてみて欲しい。オリジナルな要素など、ほとんど存在しない事に気づくだろう。Twitterで言えばRTにRTを重ねる。Blogで言えばリンクにリンクを重ねているだけだという事実に、驚くはずだ。

 これは、冒頭で上げた偉人にも当てはまるし、私のような凡人にも当てはまる事実だ。ただ、優れた人たちは引き出しが多いため、すばらしい引用のオマージュを形成する事ができる。

 それでは、なぜオリジナルがないと分かっているのに、私は記事を書くのか。それは引用と引用を紡ぎ合わせる事により、オリジナルが生まれるのではないかと期待しているからだ。

 例えばTwitterのRT。引用して自分の感想を添える事もできるが、基本的には元の呟きに対してRTするだけのシステムだ。そしてRTには基本的に、「私はこの記事が好きだ」という意味が含まれている。ブログのリンクも同じで、リンクするだけで「私はこの記事が好きだ」という意味を含む。RTもリンクも批判的な感想を添える事も可能だが、気になっていることに違いはない。

 そしてリンクとリンク、RTとRTの行間にオリジナルを生み出すために、私は言葉を無数に紡ぎ合わせ、テクストを形成しようしているのである。

hitoxu: RT @kogure: RT @maruyama097: 世界のWikipediaの情報を全部集めても、1テラバイトにはならないらしい。秋葉原で一万円も出せば、人類の知識のアウトラインに必要な容れ物は手に入るということ。言語+文字の情報圧縮能力は、とてつもないものだ。twitter.com
@hitoxu


ここで、私がこの呟きをiPhone単体で引用するのに要した工数を比較したい。

Instapaper:Instapaperアプリ起動→記事がない事に気づく(保存の仕様が不明) → SafariでWeb版Instapaperを開く → Archiveを3ページ進める → ブックマークレットで「wiki」を検索しヒット(合計120秒)

EvernoteEvernoteアプリ起動 → Syncを待つ →「wiki」を検索しヒット(合計40秒)


圧倒的にEvernoteが速い。そしてInstapaperは公式でも語っている通り、ストレージとしては保証されていない。だから私はInstapaper(text)からEvernoteへの、効率の良い連携に、思いを馳せているのである。

尚、今回の記事は出先でiPhoneを使って書いた。WriteRoomで原稿を下書き・推敲し、Safariで冒頭の引用文を探し、Safariで辞書を引き、InstapaperとEvernoteで引用した呟きを検索し、はてなtouchで投稿しようとしたが、引用記法がわからず挫折してPCから投稿した。

とにもかくにもiPhoneは素晴らしい。