ビッグバンからブラックホールまで、宇宙を「語る」ホーキング



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モニタとマイクが付いた車椅子の印象が強く、サヴァン症候群のような特殊な能力を持っている博士だと思っていたが、『ホーキング、宇宙を語る』を読んで、そのイメージが間違っていた事を知る。

アリストテレスの天体論からコペルニクスの地動説、ニュートン万有引力からアインシュタイン相対性理論まで、天文学と物理学の歴史を丁寧に解説するホーキングは、閃きだけで宇宙を解き明かそうとする天才ではなかった。

ホーキングは、1962年にオックスフォード大学を首席で卒業し、ケンブリッジの大学院に進んだ直後、医師から筋萎縮性側索硬化症を宣告される。筋萎縮性側索硬化症は、筋肉の萎縮と筋力の低下をもたらす難病で、残り数年しか生きられないと言われた。


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だが、ホーキングの場合は病気の進行が弱くなり、その後に結婚して子供も作っている。1985年に患った肺炎で声を失ったが、車椅子の手元にあるスイッチを操作して人工音声で喋ったり、文章を書いて論文を発表している。ホーキングは言う「私は幸運だ。なぜなら脳は筋肉で出来ていないからだ。」と。

一般相対性理論量子力学を結びつけ、宇宙を記述する完全な統一論に挑むホーキング。ビッグバンやブラックホールが何であるかを考察するだけではなく、なぜ宇宙が存在するのかを解明し、科学を超えて哲学の領域に踏み込もうとしている。

ホーキングは、完全な宇宙理論を発見する事で、専門家だけではなく一般人も宇宙を理解し、その存在理由が議論できるようになると言う。『ホーキング、宇宙を語る』に登場する公式はアインシュタインのE=mc²のみ。難しい理論を易しい言葉で解説し、宇宙の一般化を目指す。

本書のタイトルにある「語る」は言い得て妙。ホーキングが熱く優しく語りかけてくれる。

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