不在を科学する本『無の科学』
人間の脳は活動していないときでも大量に酸素を消費している。休眠中はデフォルトネットワークと呼ばれる網の目が起動し、シナプスを構築しながら記憶を整理している。
『無の科学』はそんな脳科学だけでなく、数学・宇宙学・物理学・生物学・医学など、様々な分野に存在する「無」を掘り下げる。
人間の病気はプラセボ効果により薬がなくても回復する。半導体の中には電気を流すための空間が存在している。宇宙には惑星同士の重力を打ち消しあうインターチェンジがある。
存在を語るのではなく、存在しないことを科学する本。実験や観測による客観的なデータを元に理論を展開しているが、時にはSFのような語り口で真空に迫り、
宇宙では、あなたの叫び声は誰にも聞こえない。音を伝えるものがないからだ。国際宇宙ステーションの壁に穴が空いたら、即座に塞いだほうがいい。そうしないと、すぐに大量の空虚が吸い込まれ、圧力が下がって血液が沸騰してしまう。
時にはシャーロック・ホームズを引用して無の概念を語る。
不可能な事柄を取り除いていったとき、残ったのがどんなにありえないものであっても、それが真実に違いない。
学術書なのにエッセイのような読み心地。粋な科学本だ。
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