素数ゼミ

ミーンミンミンミンミーン
ミーンミンミンミンミーン
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もうすぐセミの季節がやってくる。陽が昇ると朝を知らせるように鳴きはじめ、日中は気温の上昇を喜ぶように全力で鳴き、夕方は一日の終わりを嘆くように細々と鳴く。炎天下のセミの鳴き声は、うだるような暑さに拍車をかけるため、人間とっては燗に障ることがある。

セミは地面の中で幼虫のまま成長し、2年〜6年経つと地上に出て羽化する。雄のセミは雌との交尾を終えると力尽き、雌のセミは卵を産むと息絶える。セミが地上で活動する期間はたった2週間だ。

そのような日本のセミと異なり、アメリカには13年と17年の周期で地上に出てくるセミがいる。忘れたころに大量発生するため、いつも話題になるそうだ。

なぜ発生の周期が10年でもなく20年でもなく、きっちり13年と17年なのか。静岡大学の吉村教授によると、そこには数学と生物の不思議な関係があるそうだ。

セミは古代から生息しており、300万年前の氷河の時代もいた。氷河期は気温が下がり、地中の養分が減ったため次々とセミが絶滅した。だが、アメリカの中西部と東部には盆地があり、そこは比較的気温が高かったので生き残ったセミがいた。

当初は12年〜18年の周期で羽化するセミがいたが、種類の異なるセミが同時に発生すると、交雑により発生の周期が狂ったり、不妊セミが増えて長生きできなかった。そして長い長い年月をかけて生き残ったのが、13年と17年の素数ゼミだ。

素数とは、1もしくは自身の数でしか割れない数を指す。素数同士の公倍数は、素数以外の公倍数よりも大きくなるため、交雑する回数が減る。13と17の最小公倍数は221なので、221年に1度しか同時に発生せず、純血を保ちやすかった。

数学と生物には不思議な関係がある。オウム貝黄金比や花びらのフィボナッチ数、ミツバチの幾何学やフクロウの三角測量。数学と自然のつながりを知ると世界の見方が変わる。鬱陶しいセミの鳴き声も、許せるようになるかもしれない。

ミーンミンミンミンミーン


参考図書