広告の数に関する考察 - 『選択の科学』を読んで

 この記事の下には、Googleの広告が一つ貼ってある。スマートフォンで見ると画面の端から端まで表示される広告だが、PCで見ると左右に大きなスペースが空く。だから一時期、広告を二つ並べていた。

 『選択の科学』は社会心理学シーナ・アイエンガー教授の本。教授は人間の「選択」という行為に対して様々な実験を行い、ある傾向を発見した。

 スーパーでジャムの試食キャンペーンを行った。試食した客に割引券を渡して、ジャムの購入率を割り出すテストだ。試食は店舗の入り口で行ない、シャムは店内で販売した。試食はAとBのパターンに分けた。Aは24種類のジャムを並べ、Bは6種類のジャムを並べた。その中なら幾つでも試食できるようにした。

 結果は明確に分かれた。試食した客は、24種類のAが60%、6種類のBが40%で、Aのほうが多かった。ところが、店内でジャムを購入したのはAがたった3%で、Bが30%だった。つまり、多くの種類を試食した客は、自分の欲しいジャムが決まらず、結果的に購入しなかったのだ。

 他にもシャンプーの種類を減らして売り上げを伸ばした例や、投資商品の選択肢を減らして契約を伸ばした例など、同じようなケースが幾つもある。多すぎる選択肢は、機会を逃すことになるのだ。

 広告の話に戻ろう。

 一時期、記事の下に広告を二つ並べたことがあったが、クリック率は上がらなかった。下がることはなかったため「選択の科学」と同じ結果になったわけではないが、上がらなかった理由は同じだと考えている。

 ①最初に読者は、キュレーションサイトなどに並んでいる複数のタイトルから、記事を一つ選んでクリックする。②次に、記事の本文で紹介されている他サイトや商品のリンクをクリックする。③最後に、記事の末尾にある広告と関連記事を目にする。③の時点でもう、読者のお腹はいっぱいだ。

 ウェブの広告は何かを選んで決める行為とは違う。数が多ければ反射的なクリックが期待できるし、スマートフォンなら誤タッチも生まれる。だが、「選択の科学」が適用できる側面もある。広告も商品もデザインも、少ないことは往々にして良い結果を生む。


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