スペシャリスト

スペシャリストになりたい。

最初にそう思ったのは小学生の頃で、当時はマラドーナに憧れてプロのサッカー選手になりたかった。小・中・高とサッカーを続けたが、たいした努力もせず、ぼんやりと日々を送り、夢はあっけなく終わった。

高校と大学では音楽に目覚めた。エリック・クラプトンカート・コバーンに憧れてギターを始めた。自分で曲も作ったが、たいした努力もせず、センスもなかったので、早々に諦めた。

大学では英語を専攻した。映画が好きだったので、字幕をつける仕事をしようと考えた。字幕の通信講座を見つけて始めたが、ヒアリング力が乏しく、飽き性な性格も相まって、すぐに手付かずになった。

音楽はずっと好きだったので、CDショップに就職した。好みのアーティストを見つけて発注し、試聴機に入れてポップを書くと、面白いように売れた。だが、時代の波に押されてCDが売れなくなり、会社が倒産した。子供が産まれてすぐのことだった。

IT企業に再就職してブログを始めた。最初はiPhoneの記事を書いていたが、次第にエッセイを書いたり、写真をアップするようになった。少しは評価されたものの、特に何かを成すわけでもなく、だらだらと続けている。

中途半端な人生だった。

だから、今年の春から一つの分野に注力した。

最初に基礎の本を3回読んだ。

続けて実践の本を3回。

最後に7年分の過去問を3回繰り返した。

同じ本を、これほど繰り返して読むのは初めてだった。

そして10月、ネットワークスペシャリストの試験を受け、先日合格発表があった。

結果は不合格だった。

午前と午後Iはパスしたが、午後IIが7点足りなかった。7点は記述問題の1問分だ。やはり私はダメなのか。中途半端なままなのか。そんな考えもよぎったが、すぐに奮い立ち、セキュリティの本を買い漁った。

セキュリティとネットワークは密に繋がっている。来年の春にはセキュリティスペシャリスト(情報処理安全確保支援士)の試験がある。次の秋はネットワークスペシャリストにリベンジだ。

資格を取得したからといって何者かになれるわけではない。だが、何かを成し遂げた満足感は得られるだろう。私は人生をこのまま中途半端に終わらせたくない。スペシャリストになりたいのだ。