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東大教授による『教養のためのブックガイド』50選

Book

20140310213757何のために本を読むのかと聞かれたら、書くためだと答える。何のために書くのかと聞かれたら、知るためだと答える。何のために知るのかと聞かれたら、考えるためだと答える。答えは用意してあるのだが、聞かれたことは一度もない。

東京大学教授による『教養のためのブックガイド』が面白かった。

発起人の小林康夫教授は、学生が本を読まなくなったと嘆く。教養がないと会話ができない、自分で道を切り開くことができない、本は考える力を養うためにある。そんな思いを伝えるために、このガイドブックが企画された。

本書に登場する370冊のうち、私が気になったのはこちらの50冊。


第一部 いま、教養とは?

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)

ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)

眼球譚(初稿) (河出文庫)

眼球譚(初稿) (河出文庫)

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

  • 作者: リチャード・ドーキンス,日高敏隆,岸由二,羽田節子,垂水雄二
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2006/05/01
  • メディア: 単行本
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人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り

人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ

ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ

喪失と獲得―進化心理学から見た心と体

喪失と獲得―進化心理学から見た心と体

5万年前に人類に何が起きたか?―意識のビッグバン

5万年前に人類に何が起きたか?―意識のビッグバン

  • 作者: リチャード・G.クライン,ブレイクエドガー,Richard G. Klein,Blake Edgar,鈴木淑美
  • 出版社/メーカー: 新書館
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 単行本
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遺伝子が明かす脳と心のからくり (だいわ文庫)

遺伝子が明かす脳と心のからくり (だいわ文庫)

種の起原〈上〉 (岩波文庫)

種の起原〈上〉 (岩波文庫)

グラマトロジーについて 上

グラマトロジーについて 上

言葉と物―人文科学の考古学

言葉と物―人文科学の考古学

建築へ

建築へ

  • 作者: ル・コルビュジェ‐ソーニエ,Le Corbusier‐Saugnier,樋口清
  • 出版社/メーカー: 中央公論美術出版
  • 発売日: 2011/05
  • メディア: 単行本
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このガイドブックで一番刺激的だったのが、長谷川寿一教授による「人間とチンパンジーのあいだで」の章だ。チンパンジーとの分岐から言語の獲得まで、人類の進化史をミステリアスに語ってくれる。

何かを知っているだけの雑学では、評価や意思決定を要しませんが、教養は物事に対してそれを記述するだけではなく、それをどう価値付け、判断するか問われます。(中略)
教養は、新たに取り込んだ個別の知識を従来の知の体系にどう組み込むか、組み込めなかったとしたら知の体系をどう再編成するかといったことに深くかかわります。たとえば、新しいテクノロジーで人工的な生命が誕生したときにそれをどのように扱うべきか、従来の法律では対応できない問題が生じたときにどう対処すべきかなど、このような問題は枚挙にいとまがありません。


第二部 座談会 "教養と本"

宇宙のたくらみ

宇宙のたくらみ

ホーキング、未来を語る (ソフトバンク文庫)

ホーキング、未来を語る (ソフトバンク文庫)

  • 作者: スティーヴン・ホーキング,佐藤勝彦
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2006/06/29
  • メディア: 文庫
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宇宙に法則はあるのか

宇宙に法則はあるのか

出アフリカ記 人類の起源

出アフリカ記 人類の起源

  • 作者: クリスストリンガー,ロビンマッキー,Christopher Stringer,Robin McKie,河合信和
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/02/20
  • メディア: 単行本
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虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか

虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか

新版 自然界における左と右

新版 自然界における左と右

  • 作者: マーティンガードナー,Martin Gardner,坪井忠二,小島弘,藤井昭彦
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 1992/05
  • メディア: 単行本
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二重らせん (講談社文庫)

二重らせん (講談社文庫)

ヘラクレイトスの火―自然科学者の回想的文明批判 (1980年) (岩波現代選書―NS)

ヘラクレイトスの火―自然科学者の回想的文明批判 (1980年) (岩波現代選書―NS)

盲目の時計職人

盲目の時計職人

  • 作者: リチャード・ドーキンス,日高敏隆,中島康裕,遠藤彰,遠藤知二,疋田努
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/03/24
  • メディア: 単行本
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沈黙の春 (新潮文庫)

沈黙の春 (新潮文庫)

民族紛争を生きる人びと―現代アフリカの国家とマイノリティ (SEKAISHISO SEMINAR)

民族紛争を生きる人びと―現代アフリカの国家とマイノリティ (SEKAISHISO SEMINAR)

精神の生態学

精神の生態学

連戦連敗

連戦連敗


小林康夫教授は、本でなくてはいけない理由をこう語る。

ビジュアルな情報はあっという間に感覚に入る。脳は瞬時のうちにそれを享受することができるわけですけど、文字言語はイメージと違って、すぐには像が結ばれない。イマジネーションを働かして自分で像をつくり上げなくちゃいけないわけです。実はこれがすごく重要です。
(中略)
本はある意味では時代おくれの遅いメディアなんだけど、その遅さの中に途方もなく重要な精神の形成力がある。


第三部 さまざまな教養

悪魔に仕える牧師

悪魔に仕える牧師

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

微生物の狩人 上 (岩波文庫 青 928-1)

微生物の狩人 上 (岩波文庫 青 928-1)

新版 電子と原子核の発見 20世紀物理学を築いた人々 (ちくま学芸文庫)

新版 電子と原子核の発見 20世紀物理学を築いた人々 (ちくま学芸文庫)

日経 サイエンス 2014年 04月号 [雑誌]

日経 サイエンス 2014年 04月号 [雑誌]

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2014年 03月号 [雑誌]

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  • 作者: ナショナルジオグラフィック
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2014/02/28
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熱帯雨林 (岩波新書)

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リスクセンス ―身の回りの危険にどう対処するか (集英社新書)

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医療の倫理 (岩波新書)

医療の倫理 (岩波新書)

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

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  • 作者: ダグラス・R.ホフスタッター,Douglas R. Hofstadter,野崎昭弘,柳瀬尚紀,はやしはじめ
  • 出版社/メーカー: 白揚社
  • 発売日: 2005/10
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メタマジック・ゲーム―科学と芸術のジグソーパズル

メタマジック・ゲーム―科学と芸術のジグソーパズル

  • 作者: ダグラス・R.ホフスタッター,Douglas R. Hofstadter,竹内郁雄,片桐恭弘,斉藤康己
  • 出版社/メーカー: 白揚社
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いつ起こる小惑星大衝突―恐竜絶滅と人類の危機をさぐる (ブルーバックス)

いつ起こる小惑星大衝突―恐竜絶滅と人類の危機をさぐる (ブルーバックス)

コンクリートが危ない (岩波新書)

コンクリートが危ない (岩波新書)

現代たばこ戦争 (岩波新書)

現代たばこ戦争 (岩波新書)

モンゴロイドの道 (朝日選書)

モンゴロイドの道 (朝日選書)

DNAに魂はあるか―驚異の仮説

DNAに魂はあるか―驚異の仮説

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ジャパン・アズ・ナンバーワン

ジャパン・アズ・ナンバーワン

  • 作者: エズラ・F.ヴォーゲル,Ezra F. Vogel,広中和歌子,木本彰子
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 2004/12
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石浦章一教授による「自然科学の新しい常識」の章も面白い。科学者は発見した事実を単に書くだけではだめで、豊潤な言葉で読者を魅惑する必要がある。それをエッジの効いた語り口で教えてくれる。

過去を振り返ることも重要なら、時代の先端を読むことも大切である。月刊で出版される『日経サイエンス』誌は翻訳が主であるが、各トピックの著者がその分野の第一人者であることが多く、科学の今がよくわかる。科学を志す人にとっては必読であり、そのことは私が大学生であった30年前も同じだった。シャープな感性は他分野を勉強することで磨かれるものだが、この雑誌は真にその任を果たしている。ここでもう一つ違う分野で時代の先端を読むのを挙げろと言われれば、月刊『ナショナル・ジオグラフィック』しかない。


第四部 教養の彼方

テクストの快楽

テクストの快楽

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

死霊(1) (講談社文芸文庫)

死霊(1) (講談社文芸文庫)


野崎歓教授は、学術書だけが教養を身に付けるツールではないと言う。

なぜ文学なのか。急いで理由を二つ付け加えておきます。一つは、文学が基本的に専門知識や準備を必要としない領域であり、読む側は本を開きさえすればいいという自由さを本質とするものだからです。理系文系の別なく、文学はだれでもすぐ入門可能なのです。もう一つは、繰り返しになりますが、それが「書き言葉」の力に触れるための最適の場だから。情報に還元されない言葉のボリュームや色気の精緻さを感得する能力を育まずしては、言葉をもつ動物として生まれてきた甲斐がないというものでしょう。


それにしてもリチャード・ドーキンスが人気だ。少し前に『利己的な遺伝子』を読んだのだが、あまりピンとこなかった。周辺の知識がなかったせいでもあるが、レトリックが多すぎて事実と予測の区別がつかなかったのだ。『盲目の時計職人 』など、別の本にも挑戦してみようと思う。なぜ懲りずに読むのかと聞かれたら…

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