スペシャリスト
スペシャリストになりたい。
最初にそう思ったのは小学生の頃で、当時はマラドーナに憧れてプロのサッカー選手になりたかった。小・中・高とサッカーを続けたが、たいした努力もせず、ぼんやりと日々を送り、夢はあっけなく終わった。
高校と大学では音楽に目覚めた。エリック・クラプトンやカート・コバーンに憧れてギターを始めた。自分で曲も作ったが、たいした努力もせず、センスもなかったので、早々に諦めた。
大学では英語を専攻した。映画が好きだったので、字幕をつける仕事をしようと考えた。字幕の通信講座を見つけて始めたが、ヒアリング力が乏しく、飽き性な性格も相まって、すぐに手付かずになった。
音楽はずっと好きだったので、CDショップに就職した。好みのアーティストを見つけて発注し、試聴機に入れてポップを書くと、面白いように売れた。だが、時代の波に押されてCDが売れなくなり、会社が倒産した。子供が産まれてすぐのことだった。
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