X100Fはハイライトやシャドウなどの階調をカスタマイズすることができる。撮った後ではなく、撮る前から調整できるため、目の前の光景に対してより深く向き合える。今回は、このカスタム設定について解説したい。
以下は使用説明書の抜粋。
ハイライトトーン
画像のハイライト部の調子を軟らかくしたり、硬くしたりできます。ハイライト部の調子を硬くしたいときは「+」側に、軟らかくしたいときは「-」側に設定します。
シャドウトーン
画像のシャドウ部の調子を軟らかくしたり、硬くしたりできます。シャドウ部の調子を硬くしたいときは「+」側に、軟らかくしたいときは「-」側に設定します。
カラー
画像の色の濃さを設定します。撮影画像の色を濃くしたいときは「+」側に、薄くしたいときは「-」側に設定します。
シャープネス
画像の輪郭をソフトにしたり、強調したりできます。輪郭を強調したいときは「+」側に、ソフトにしたいときは「-」側に設定します。
ノイズリダクション
高感度撮影時に画像に発生するノイズを低減できます。よりノイズを低減してなめらかにしたいときは「+」側に、画像の輪郭を残したいときは「-」側に設定します。
調整の幅はそれぞれ7段階まで(-2 -1 0 +1 +2 +3 +4)。ハイライトトーンとシャドウの説明が少し分かりにくいが、「硬くする/軟らかくする」を「強くする/弱くする」に言い換えると分かりやすい。
例えばハイライトトーン。
タイルの地面に反射する光を強調する場合は、ハイライトトーンを「+2」にする。
次にシャドウ。
竹やぶの奥を濃くしたい場合は、シャドウを「+2」にする。
私は「カラー」の設定はあまり使わない。この項目を調整すると、先日紹介したフィルムシミュレーションに影響が出る。例えばクラシッククロームでカラーを「+2」にすると、標準のPROVIAに近づいて色調が崩れてしまう。
「シャープネス」はLightroomの「明瞭度」と考える。先代のX100Tを使っていた時は、シャープネスをプラスにしてドラマチックな階調にしていたのだが、X100Fではゼロにしている。画素数が1600万から2400万に上がったこともあり、明瞭度に頼らない表現を模索している。
最後に「ノイズリダクション」。これはISO感度の粒状性と同じで、プラスにすると滑らかになり、マイナスにすると粒度が上がる。私はあまり気にしていなかったのだが、下記の記事を読むと使いたくなる。
PRO Neg.Stdで、NR(ノイズリダクション)を「-1」に設定しているあたりが心憎い。
プロの写真家、内田さんのレシピも参考になる。
X100Fはこのような階調をセットで登録することができる。登録できるのは7パターンまでで、フィルムシミュレーションと組み合わせて登録することも可能だ。
例えば次の写真。最初は全体的に眠たい。
そこで、シダの葉に反射している光を強調するため、カスタム設定①で「クラシッククローム / ハイライト +2」にする。
ハイライトは強調されたが全体的に飛んでいるため、カスタム設定②の「クラシッククローム / ハイライト +2 / シャドウ +2」で引き締める。
これでメリハリのある絵になった。
先の記事で紹介したファンクションボタンにカスタム設定を割り当てると、ファインダーを覗いたまま選択メニューを呼び出すことができる。呼び出した階調はフィルムシミュレーションブラケティングで撮影しても反映される。その場合の色調は、ブラケティングの設定が優先される。
富士フイルムはカメラだけで作品を作り込むことに重きを置いている。フィルムシミュレーションで色調を変え、カスタム設定で階調を整える。目の前の光景をより印象的にするために、その場で組み合わせを考える。実際に試してみると分かるが、これが後からPCで調整するより何倍も楽しい。
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