青春を置き去りにした街 - 犬山

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私は4歳の頃、愛知県の犬山市に引っ越してきた。当時の記憶も薄っすら残っていて、母親が乗っている自転車が倒れて荷台から放り出されたり、帽子の中に隠していた小銭をトイレに落として怒られたり、幼稚園の先生の胸を触ったり、そんな他愛もない記憶だ。


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小学校は犬山城のふもとにある学校に通った。4年生までは下を向いて歩く根暗な少年だったが、5年生でスポーツ少年団のサッカーを始めてから活発になった。テクニックは大したことなかったが、足が一番速かったのでキャプテンになり、生徒会長にもなった。


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そのまま地元の中学に上がり、同じくサッカー部でキャプテンになり、学級委員長も務めた。ただ、すべてが順風満帆だったわけではない。部活ではヤンキーの先輩に空気椅子をやらされたり、泳げないのが嫌で水泳大会をずる休みするなど、苦い記憶も幾つかある。


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成績は中の上で、高校は地元の学校に入った。部活はサッカーを続けたが、足が速いだけではレギュラーになれず、ベンチを温めることが多かった。成績はそれほど悪くなかったが、3年の夏に猛烈な恋に落ち、受験勉強を放り出して浪人した。


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そして1年間の予備校生活を経て、私は犬山を飛び出した。


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あれから20年以上経って、久しぶりに犬山祭りを訪れた。犬山駅から犬山城に向かう街並みは変わっていなかった。質素な味が癖になる焼きそば屋「ことぶき」や、サッカーの打ち上げをした中華料理店「池田屋」など、店も風景も当時のままだった。


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大人になると、犬山はいい街だと思うようになる。犬山城明治村などの観光名所もあり、住宅街は閑静だ。ただ、思春期を過ごすにはあまりにのどかで、あまりに窮屈だった。だから私は、甘く苦い青春を置き去りにして犬山を出た。


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あれから結婚して子供もできた。こうして写真の趣味もできて、名所を楽しめるようになった。久しぶりに犬山の街を歩いて、古い友人に会った。置き去りにした青春はちゃんと連れて帰ることにした。自分が育った街は、自分の一部なのだ。


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